上記の表にある、昨今のNHK土曜ドラマは、社会派ものが多く、すべて綿密な取材をもとに、構成されている。どの作品も知られざる”職”の内情に着目し、登場人物の個と個の対立や、葛藤が興味深く映し出されている。
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「2004年頃、NHKの中で改めて、密度の濃い面白い番組を作って、視聴者にちゃんと届けたいという気運が高まっていました。ドキュメンタリー『プロフェッショナル仕事の流儀』のパイロット版が作られたのも、この年です。その流れで、NHKのアイデンティティとも言われる土曜ドラマ('75~'98)を復活させようという動きがありました。この枠ではかつて、松本清張さんの『ザ・商社』や山田太一さんの『男たちの旅路』など骨太な社会派ドラマが存在した。当時の精神を受け継ぎながら、新しい脚本家、演出家やキャストを得て『ハゲタカ』『外事警察』が生まれたんです」

土曜ドラマが次第に類を見ないリアリティを帯びていったことには、報道に強いNHKの取材のノウハウを生かした脚本作りがある。劇場版の監督も務めた堀切園健太郎は言う。

民法では、フジ系の支持が高かったが、後はあまり比率の差はなかった。NHKはやはり大河ドラマ、朝ドラの支持率が高いようだ。
調査協力:マクロミル(2012.4.20~21/対象者200人/単一回答)
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「NHKのディレクターの取材力は高くて、以前は、ドラマのディレクターが報道の記者よりも早く現場取材をしているという時代もあったそうなんです。『ハゲタカ』『外事警察』では、当時の気概で取り組みました。NHKだからと信用してもらいやすいという利点もあります。特に『外事警察』では、かなり深いところまで取材をして、こんなことを聞いてしまってもいいのか? と不安になるほどでした」

徹底した取材データを基に、強度を増した脚本が独特の映像美で彩られる。

「シーンの頭から最後までカットを割らずに撮る方法はハリウッドスタイルとも言われますが、実はドキュメンタリーのノウハウなんですよ。欲しい画のために段取りを優先するのではなく、何が起こるかわからないライブ感を大事にしています」

ドキュメンタリー的手法が、NHKの社会派エンタテインメントの可能性を切り拓いたのだ。