はたと、後輩男子と「おばちゃんとマスター」との関係について考えてみた。
年の頃は60代か? 70代にも50代にも見える。
「親子っすかね」
「えっ、どっちが親でどっちが子?」
「それはわかりませんよ」
たしかにわからない、のだ。夫婦のようにも見えるし、
きょうだいですよ?と言われたらああそうかとも思える。
男も女も50にさしかかると、さまざまな境界線があいまいになる。
いわば「あがり」が見えてきた人間にのみ与えられるめくらまし。
とにかく二人がもしもビーチバレーに出たならば優勝間違いなし、
みたいな純度の高いあうんの呼吸だけがそこにある。
かつそこには、我々にはない地に足がついた安定感と充実感。
きらめいて見えた。
こんな夫婦(かどうかわからんが)がいい。
彼らには定年などない。燃え尽きるまでふたりでひたすらにもつを焼くだけだ。

我々はしめにもう1リピートすることにした。
「ビールとしんことナンコツうー」
みなまで聞かずとも、神からおかわりがわたされた。
宝くじよか一攫千金よか、
そんなことよりその道の神と呼ばれるところまで、我々は行きたい。
そんなことを語らいながら店をあとにし、
どういうわけだか通りの向こう側にあるタコ焼き屋にはしごするのであった。

 

 

<今夜のお会計>
ビール大×6 3000円
おしんこ×2 200円
串 70円×6 420円
串 80円×5 400円
二人で合計4020円

【店舗情報】
丸小
東京都中野区東中野4-4-7
19時~23時、日・祭休。

文筆業。大阪府出身。日本大学芸術学部卒。趣味は町歩きと横丁さんぽ、全国の妖怪めぐり。著書に、エッセイ集「にんげんラブラブ交差点」、「愛される酔っぱらいになるための99の方法〜読みキャベ」(交通新聞社)、「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)など。「散歩の達人」、「旅の手帖」、「東京人」で執筆。共同通信社連載「つぶやき酒場deep」を連載。

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