樋口:ほんっとに間違った“母性信仰”ですよ!おっぱいあげている時も「赤ん坊と見つめ合わないといけない!」とか、アホか!

村上:1日に8回も10回もやっているのに、いちいち話しかけてられないですよ。生活者としては「はいはい飲んでくれてオッケー!ラッキー!この隙に何かしよ」って、普通はそう思いますよ。

樋口:自分が“おっぱい”をあげることがないから、あんなことが書けるんですよ!

村上:だから『おっぱいがほしい!』なんですね?

樋口:そうなんです。どんなに僕が育ててミルクを作ってあげていても、赤ん坊が夜中「わー」って泣いたら横で寝ている妻が“おっぱい”を「かぽ」ってくわえさせれば黙るっていう。

なんだその、武器にして防具?「アァいいなぁ」って思いましたね、ほんっとに。

今:こういうのを聞いてどうですか、加納さん?

加納土さん(以下、加納):そうですねぇ、自分の中では想像できない世界だなというか。

まぁ僕の母親とかはバリバリ大人たちに託して、レイトショーをひょいっと観に行ったりとか、酒飲み過ぎて終電で帰ってこなくて、でも誰かが最後まで見てくれていたりとか。

今:お母さん、自由!メチャメチャ自由!

加納:それこそパパ友じゃないですけど、僕なんか小学校の授業参観は6人ぐらい男が来て「パパ何人いるんだ?」みたいな感じだったんで。

今:ま、変に疑われちゃうよね。「愛人なのかな?」みたいな(笑)。

加納:「どれだけお父さんいるの?」みたいな。

樋口:僕はこの間、ママ友会の人に言われました。「樋口さんのところはいつも保育園の送り迎えもパパだけだから、何か事情があって、ママの方は死んじゃったか別れたかしているんだろうなって思ってました」って。

今:ママだけ、あるいはママとパパだけで育児をすることが当たり前になっちゃっているから、樋口さんや加納さんのところみたいな勘違いが生まれちゃうんだよね。

「共同保育」お互い補完し合えれば親が100点満点である必要はない

樋口:加納さんの『沈没家族』は、ムチャクチャ面白かったですよ、もしまだご覧になってない方はオススメです!

今:樋口さんは、映画評もされていますからね。

加納:僕は「自分の世界の方が当たり前だ」っていう風に、小学校3年生ぐらいまでは思っていたんです(笑)。

樋口:ほんっとファンキーなお父さんとお母さんで。予告編にも映っていたと思うんですけど、お父さんがキレた出川みたいな感じで(笑)。お父さんはお父さんで、ため込んでいたものがあって。

加納:そうですね。実の息子を見に行こうと運動会に行ったら、知らない大人たちが20人ぐらい土を囲んでいて「俺は実の息子なのに遠目から望遠レンズで土の写真を撮ることしかできなかった!」みたいな。

そういう“奪われた感”みたいな、ものすごい気持ちも、彼に15年ぶりに、15年ぶりに会ったワケではないんですけど、あらためてカメラを向けたらメッチャしゃべったりとか。

『沈没家族』には「共同保育」によって逆に疎外されてしまった人物、みたいな視点もあるので。

樋口:僕はとにかく「環境に恵まれてたな」と思います。

お母さんが進歩的な考えを持った方で、映画を観た人みんなに共通する感想だと思うんですけど、ちょっとこれ失礼なんですが「悪い大人がいなくてよかったな」と思いました。あれだけ人がいたなかで、よからぬ大人がいなかったことは、幸運だったなと。

今:いっぱいいたからじゃない?僕は「沈没ハウス」に行ったことがあるので雰囲気を分かっているんですけど“いい感じ”じゃないんですよ。

無精ヒゲ生やしてレロレロのTシャツ着た「仕事してんのかな?」というような人たちがゴロゴロいるワケ、周りに(笑)。

だからむしろ“立派”じゃないんですよ、だけどお互い折り合おうとしているの。

「飯はアイツに作らせた方がウマい」とか「アイツはずっとタバコ吸ってるから遠ざけとこう」とか。大人同士で土くんをどう守るかっていう会議までやって、日記までつけてあるワケ。

マジメはマジメなんだけど「いい大人たちか?」って言われると“ちょっといかがわしい”大人たちの方が近い。

だけどお互いに「子どものことについては俺たちお互いに何も知らないよね」って了解し合っているので、学び合うことはしてくれていた。そこだけは誠意があるなって感じがする。

加納:常時、多い時は毎日10人ぐらい、家に大人がワチャワチャいても、別に僕の方で苦手な人と距離を取ることはできるので、「この人、今日ちょっとテンションやだな」とかだったら離れることもできるし。

好きな人もいたし、ちょっと苦手な人もいたしっていうので、そういう意味で自分の中でうまく取捨選択をした結果、幸いにもほんとイヤな思い出が全然ないし。

「沈没家族」で一緒に育った子どもがもう一人いるんですけど、その子もイヤな思い出はなかったって言っているし。

今:たぶんね、ダメな大人たちが土くんによって育てられた話なのよ。実は(笑)。

ダメな奴らがゴロゴロ集まってきて、土くんがちっちゃいからどう付き合っていいかわかんない、コミュニケーションが取れないっていうことで「学ばなきゃ!」みたいになるワケですよ。

その面白さがあってね、あれ見て僕は「100点満点のママ、パパは要らないや」って思った。いろんなヤツが補完し合って子ども育てた方が楽しそうだなって、そんな気がしてくるなって。

村上:「共同保育」絡みの話なんですけど、もともと、まだ人間がサルに近い頃?5人とか10人ぐらいのちっちゃいグループで、ウロウロ動き回って、虫とか、ちっちゃい動物を獲って食べていた頃ってまさに「共同保育」なんですよね。

何人かの赤ちゃんとか、ちっちゃい子どもとかがいて、この子たちと一緒に、お兄さん・お姉さん・おじいちゃん・おばあちゃんとかで暮らしていた時代が、サルの頃なので500万年前から、農耕を始める1万年前ぐらいまでずーっとそういう生活をしていたので。

たぶんDNAのどこかにそれが残っていて、なので「共同保育」が一番、最も自然な姿なのでは?

だからお母さんが「キーッ!」ってなって、お父さんが「キーッ!」ってなって、子育てを二人きりでやるというのは、自然に反していると思うんですね。

今:ママだけ、あるいはパパやママだけで背負い込まないためにも、やっぱり子どもを産んだ後、なるべく早く外につながれるようになることが理想なんでしょうね。

赤ちゃんが生まれた後「“おっぱい”があるから思うように外出できない」というママも少なくないようですが、実は今日の【全日本おっぱいサミット】では“おっぱい”をあげながらイベントを楽しんでくれているママと赤ちゃんたちがいます!

【授乳ショー】をしてくださるママと赤ちゃん、そして【授乳ショー】司会のNPO法人子連れスタイル推進協会・光畑代表、ステージへどうぞ!