『sutraスートラ』 『sutraスートラ』

初めての日本上演に注目が集まっている『sutraスートラ』。仏教用語で「経典」を意味するタイトルを掲げて見せるのは、本家嵩山少林寺の武僧による大迫力のダンス・アクロバットだ。演出は、世界で最も多忙な舞踏家と言われ、日本でも森山未來主演の『テヅカ』『プルートゥ』を手がけたシディ・ラルビ・シェルカウイ。世界60都市で絶賛されたパフォーマンスはいかに生まれ、どんな魅力を持つのか。世界公演で主演を務めてきたアリ・タベ、嵩山少林寺僧侶のファン・ジャハオとグァン・ティンドンが来日し、語ってくれた。

『sutraスートラ』チケット情報

作品づくりにあたって演出のラルビが行ったのは、アリとともに2か月間、少林寺に滞在するということだ。そこで「“身体と動き”という共通言語を得て、アイデアを交換し合うことができた」とアリは言う。「ラルビがひとつの形を提案し、それで遊んでみてと僧のみなさんに言うこともあれば、僧のみなさんに動いてもらって、それをどう使いましょうかと一緒に考えていくこともある。だから、大変ではありましたけど、ゲームのような楽しさも感じていました」。武僧のリーダーを務めるファンも、「ダンスと武術は少し似ているところがあって、お互い楽しく交流できたと思います」と振り返る。

その結果、現代アート界の巨匠、アントニー・ゴームリーのアイデアも加えられ、大きな箱を使いながらの驚愕のパフォーマンスが誕生。初演では少年僧として、現在は大人の僧として出演しているグァンは、「箱はパートナーのようなもの。箱とのコラボレーションはとても難しく、大人を手伝うぐらいでよかった少年僧のときはラクでした」と笑うが、その通り、武僧たちは箱を移動させてさまざまな形を作りながら、圧巻の身体表現で静と動の世界を作り出す。「箱を使って私たちが表現しようとしたのは、少林寺の生活や文化のなかにあるものであり、西洋文明に存在しているもの。この箱を通して、次は何が起こるんだろうとびっくりしてもらえるような場面をたくさん作りましたし、ただのカンフーのデモンストレーションではなく文化を伝えていく、そんな次元を持った作品にしていくことを大事に作ってきました」とアリ。「このパフォーマンスには、伝統的な少林寺の文化も含まれていれば、舞台美術や音楽や照明と、新しい文化も入っています。そのすべてを楽しんでもらえたらうれしい」とファンも言う。まさしく異なる文化が交流し、融合してできた舞台。ジャンルや国の違いを超越したところにある力強いパフォーマンスを楽しみにしたい。

公演は10月1日(土)・2日(日)東京・オーチャードホール、5日(水)愛知県芸術劇場大ホール、8日(土)福岡・北九州芸術劇場大ホールにて。

取材・文:大内弓子