iPhone 7/7 Plusの売れ行きは低調なスタートとなった

家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、9月16日発売の「iPhone 7」と「iPhone 7 Plus」の発売後3日間の販売台数の合計は、2015年に発売した「iPhone 6s/6s Plus」の約6割、2014年に発売した「iPhone 6/6 Plus」のおよそ半分にとどまり、出足は鈍いスタートとなった。

「iPhone 7」は前年比大幅減 3社のキャリア別シェアは変化なし

「iPhone 7/7 Plus」に限った発売3日間のキャリア別の販売台数シェアは、ソフトバンク41.0%、au36.3%、ドコモ22.7%。シェアは前年とほぼ変わらず、販売台数は3社とも下がった。

予約数に対し、入荷数が少なく、すぐに手に入らないのは毎年のこと。発売直後の販売台数は、供給体制によるところが大きい。しかし、今年は発売前日の時点で、Appleが公式に、予約分だけで「iPhone 7」のジェットブラックと「iPhone 7 Plus」が完売し、Apple Storeでの店頭販売分はないとアナウンスするほど、極度に品薄になっている模様だ。

発売から2週間の「iPhone 6」の販売台数を1すると、「iPhone 6s」は0.88、最新の「iPhone 7」は0.65。また、同期間の「iPhone 6 Plus」の販売台数を1すると、「iPhone 6s Plus」は0.49、最新の「iPhone 7 Plus」は0.16だった。

4.7インチモデルに比べ、5.5インチと大画面のモデルの落ち込みのほうが大きく、同時に発売したiPhoneに占める割合も、20.6%、12.7%、5.7%と、年々、低下しているが、キャリアショップや家電量販店の店員の話、Appleのオンラインストアの出荷状況などから判断すると、むしろ「iPhone 7 Plus」の人気は例年より高く、初期入荷の少なさが響いているようだ。

「iPhone 7」「iPhone 7 Plus」とも、新色のジェットブラック、ブラックに予約が殺到。一方、シルバー、ゴールド、「iPhone 6s/6s Plus」では一番人気だったローズゴールドは、新色2色に比べ、比較的早く入荷する見通しで、「iPhone 7」は、家電量販店にも当日販売分が若干入荷しているという。過去最多の5色に増えたカラーは、ユーザーの買い替え意欲を刺激したものの、初速の鈍さに拍車をかけてしまった。

キャリアが把握する予約数は過去最高 ”ねじれ”の要因は購入先の分散か

発売日に開催したプレス向け説明会で、NTTドコモの吉澤和弘社長は、「iPhone 7/7 Plusの予約数は過去最高」とコメント。KDDI(au)、ソフトバンクも異口同音に、予約の好調ぶりをアピールする。

新しいiPhoneには、美しい仕上げ、従来より暗所の撮影に強くなったカメラ、そして、防水やFeliCa対応、ステレオスピーカーなど、さまざまな新機能が追加された。新しいApple Watch Series 2でも利用できる、10月下旬開始予定のモバイル決済サービス「Apple Pay」は、日常の決済スタイルを変える可能性も秘めている。Appleの広報担当者によると、防水機能は、世界ではニーズがなく、なぜか、水没による故障が多い日本のユーザーに向けて実装したものだそうだ。

予約数は過去最高にも関わらず、販売台数は過去3年間で最低という”ねじれ”は、絶対的な供給不足に加え、「BCNランキング」の集計対象外のキャリアショップやApple Store、オンラインのApple.comで購入する傾向が強まり、こうした変化にあわせ、家電量販店への出荷数を絞った、という可能性も否定できない。

都心の家電量販店では、真っ先にSIMフリースマートフォンが目に入る。高性能なミドルクラス・ハイエンドクラスでも3~6万円台という価格帯。一方iPhoneは、こうしたSIMフリースマホに比べれば維持費を含めて割高だ。これまでの「実質0円販売」ができなくなった結果、iPhoneは”一番安いスマホ”から、海外と同じ、”高級機種”にポジションが移った。

iPhoneの成長は、2年前の「iPhone 6」がピークだったかもしれない(詳しくはこちら)。しかし、その間に進んだスマホの多様化、オンライン販売を含めた販売店の棲み分けといった変化を考慮すると、実際の売り上げはそこまで悪くないだろう。注目の「Apple Pay」がスタートする頃には、品薄も改善するとみられる。その時、販売が伸びるかどうかが、iPhone 7/7 Plusの実力を問う試金石になる。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。