そして佐古への生活保護の受給が始まるのですが、この前段階において家族や親族との関係、収入の調査、健康状況などが調べられることになっています。数千万円を稼ぐ芸人の子供が居たり、毎月40万円のローンを負担できる子供から贈られたマンションに住んでいれば、受給は難しいと思うのですが、調査に強制的な権限はなく、人手不足が原因でザルになっているとも言われています。佐古の場合は体調不良は事実ですし、同伴したNPOの睨みのようなものもあったのかもしれません。

さて生活保護を受けられた佐古が、自立に向かって努力するのかと言えば、以前にも増して怠惰な生活に浸っていきます。もちろん佐古本人の甘え体質もあるものの、生活保護のシステムに問題があるとも言えます。状況によって異なりますが、生活保護を受給すると成人男性であれば10万円前後が毎月支給されます。その他に光熱費、医療費などが補助され、年金や保険料なども概ね免除されます。しかし仮に働くなどして5万円の収入があったとすると、支給額が5万円減らされてしまいます。また収入が支給額を超えると、当然支給はゼロとなり、それまであった補助や免除なども一遍にのしかかってきます。つまり『少しぐらい働いて稼ぐよりは、このままの方が良いや』の考えが生まれるのも、無理からぬことかもしれません。これが生活保護を“受給天国”とも“抜け出せない地獄”とも呼ぶゆえんです。

生活の不安がなくなった佐古は時間を持て余して、自宅のパソコンでネットサーフィンなどに精を出します。
「生活保護でパソコンを持ってて良いの?」
そう思った方は、生活保護の制度に詳しい方でしょう。生活保護を受給するには余分な資産があってはいけません。貯金は言うに及ばず、有価証券や不動産や高価な資産も処分を求められます。
「それらを使い切った後で生活保護を受けてください」と。
ただこれらも運営上の都合でいろいろ変化しています。以前はエアコンやクーラーの類は禁止されていましたが、猛暑が続いた際に入院したり死亡した人が増えたりしたことから、所持が認められるようになってきました。また自家用車も禁止されていましたが、障害者が移動に必要な場合や、公共交通機関が乏しいところでは事情を考慮されるようにもなりました。パソコンやネット環境は地域によって対応がことなるようです。
「職探しや病院探しなどの情報取得に必要」とすることもあれば、「生活に必要不可欠とは考えられない」との見方もあります。
「おいおい、役所は何をやってるんだよ」
役所も仕事はしています。そこで登場するのがケースワーカーです。付け加えておきますが、“ケースワーカー”は通称で、職業や職掌や職責を現すものではありません。福祉事務所で生活保護を担当する人(現業員)を呼ぶことが多いのですが、児童相談所や民間団体の職員などもケースワーカーと呼ぶことがあります。佐古の所にもケースワーカーの男性が何度も訪れ、なんとか自立を促そうとするのですが、佐古は働く意欲を見せません。ケースワーカーはあくまでも働きかけをする立場で、同作品のケースワーカーも頑張ってる方でしょう。ただ人手不足と権限不足がありそうです。