働くママにも忘れて欲しくない、お母さんの役割

のぶみ:今は、働いていて時間がとれないお母さんも多いです。働いて家事までするっていうのは本当に大変ですよ。時間も少ないし、身体も疲れるから子どもと遊ぶ時間が少なくなります。

でも、少ないからこそ〝おばあちゃん方式〟をとって、子どもと一緒にいる時間はなるべく遊ぶようにしてほしいんです。

子どもが好きなことを一緒に楽しんであげるんです。一緒に楽しんで、子どもがどんなことに興味を持っているのかを知ろうとする。一緒に新幹線の種類覚えるとか。

それはすごく大事なことだと思います。新幹線とか恐竜とか、好きなものの種類を一緒に覚えてあげると、子どもの記憶力もアップするっていう話もあるんですよ。

お母さんの役割は「大好き」って言い続けること、それと、遊んであげること。それがとても大切なんだと思います。

――そうは言っても、つい先回りしていろいろ言ってしまいます。

のぶみ:「ああしなさい、こうしなさい」なんて言わなくてもいいんです、実は。

お母さんが先回りしていろいろ言ったら「お母さんのいうこと聞いてればいいんだ、めんどくせぇけど」ってなるじゃないですか。そうすると、学校に行っても「先生のいうこと聞いてればいいんだ、めんどくせぇけど」ってなる。そのうちに「生きてるって、めんどくせぇな」ってなっていくんです。

だから、たとえば、子どもが幼稚園に行きたくないって言ったとき「じゃあきょうはどうやって過ごす?」って聞いて考えさせてあげたらどうでしょうか。

――なるほど。自分で意味を考えさせるんですね。

のぶみ:「遅刻しちゃいけない」にしても、言うのであれば納得のいく説明をしてほしい。たとえば、好きな女の子と初めて待ち合わせして「ゴメン遅刻しちゃった」じゃマズいよね、とか。

そう話して、もし「学校の先生は別に好きな人じゃない」って言われたら…その子の勝ちですね(笑)。だって学校はデートじゃないもんね!

逆に、遅刻ばかりしてる子でも「僕は朝10時ぐらいから脳が活性化するんだ」って言い続けて、将来IT企業に勤めて午後から仕事するスタイルでうまくいくなら、それはそれで正解なんです。

子どもの考えを聞いてあげていれば、自分で考えられる子になると思うんです。

ただし、人とのコミュニケーション能力を身につけるには学校が重要ですね。それは一人ではできない。どんな職業についたってコミュニケーション能力はいりますから。

笑いと涙のバランス

――『ママのスマホになりたい』、子どもたちやママの反応はどうですか?

のぶみ:読み聞かせをすると、子どもたちもみんな面白がって聞いてくれます。
この本って、読み聞かせするとにぎわう一冊なんです。音で感じられるから、読み聞かせに向いているんじゃないかと思いますね。

―—内容がシンプルで、3分半くらいで読めるのに、笑って泣けますね。

のぶみ:「しんかんくん」も「ママがおばけになっちゃった」も何度も子どもや大人に聞いてもらって作りあげましたけど、これも時間をかけて、読み聞かせもして言葉の流れを整理したり、かなり直しました。

本文の最後の見開きでママが「こんな ママで ごめんね」って言って、そこで終わらない。ここで終わっちゃダメなんです。

そのあとの「しつもんタイム」や裏表紙で「つぎのひ」のひとコマまで一気に読んでほしいですね。裏表紙のオチで子どもたちはみんな盛り上がりますよ。

生きていれば、それだけで子育ては正解!

のぶみ:子育てって、子どもがずっと生きていればひとつの正解なんだと思うです。「産んだ」って、それだけですごいことなんだから。

生きていればそのうち「お母さんありがとう」って言うようになりますよ。お母さんが怒ってばっかりだったとしても。「お母さんにほめられるために生きてきた」って言ってくれるかもしれないし。

だから、それにプラス、何ができるかなっていうところの参考にしてもらえればと思います。 

---

絵本作家として17年間、子どもと全力で向き合い続けているのぶみさん。
現時点で53万部を超えるベストセラーになった『ママがおばけになっちゃった』(講談社)シリーズでは〝みんな、ママにもっと感謝しようよ〟というメッセージを込めるなど、子どもたちだけでなくママにも寄り添った作品を生み出しています。

そんなのぶみさんが描く、スマホ世代の親子のきずな。親子で笑って泣いて、心がぽっと温かくなる1冊です。


*参考:「平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」―総務省

ライター。業界紙、エンタメ系雑誌記者を経て、現在フリーランス。日々の暮らしに「へぇ〜」のアクセントを提供したいと日々勉強中。関心あるテーマは教育、お金、哲学。好きな本のジャンルは児童書・YAで、特技は物語の世界に入りこむこと。