記者会見より <常任指揮者>シルヴァン・カンブルラン (C)読響 記者会見より <常任指揮者>シルヴァン・カンブルラン (C)読響

9月30日、読売日本交響楽団の2017~18年シーズンの公演プログラムの発表会見が行なわれ、来年4月からの充実のラインナップが明らかになった。

最大の注目は、来年11月に予定されているメシアン(1908~92)のオペラ《アッシジの聖フランチェスコ》全曲上演(演奏会形式)。休憩を含めて6時間近くを要する大作だ。老境に入ったメシアンが8年をかけて完成した、彼の唯一のオペラで、1983年にパリ・オペラ座で小澤征爾の指揮で世界初演された。日本では1986年に小澤/新日本フィルが全8景のうち3景を抜粋で上演したが、全曲の上演は今回が日本初演。指揮は常任指揮者のカンブルラン。彼はこの作品を、1992年のパリ・オペラ座を皮切りに、4つのプロダクションで24回指揮しており、これは世界最多だ。会見に出席したカンブルランは、「曲が進むほどに聴き手が引き込まれるのがわかる。音の色にこだわった、感覚のごちそうと呼ぶべき作品。作品を分析しようとすれば難解かもしれないが、聴き手に対しては障壁がないと言い切れる。聴き手のための作品だ」と語った。

18年1月定期の、クラリネット奏者で作曲家のイェルク・ヴィトマンの自作自演によるクラリネット協奏曲《エコー・フラグメンテ》(2006)も日本初演。バロックとモダン、ピッチの異なる2つのオーケストラを対置するという興味深い作品だ。

指揮者陣では、巨匠スクロヴァチェフスキがブルックナーの5番とベートーヴェンの《英雄》を携えて登場。来年4月から首席客演指揮者に就任するコルネリウス・マイスターは9月(ベートーヴェン《田園》他)と12月(マーラー3番)の公演を指揮する。現ウィーン放送響の首席指揮者兼芸術監督のマイスターは2018年からカンブルランの後任としてシュトゥットガルト歌劇場の音楽総監督に就任することが決まっている。18年3月にはベルリン・コーミッシェ・オーパー音楽総監督のヘンリク・ナナシが初来日。ルノー・カプソンとブゾーニのヴァイオリン協奏曲を演奏する。

他にも、ネルソン・フレイレのブラームスのピアノ協奏曲第2番(7月)やギドン・クレーメルが弾く20世紀作品(9月)といった王道プログラムから、フュージョン・グループのウェザー・リポートの活動などで知られるドラマー、ピーター・アースキンが登場するマーク=アンソニー・ターネジのドラムス協奏曲(12月)まで、興味深い公演ばかり。目と耳を離せない読響だ。

取材・文:宮本 明

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