ADHDの特性と親の心構え
――それでは、ADHDの子どもにはどんな特性があるのでしょうか。
山口:ADHDとは別名、注意欠陥多動性障害といいます。社交的なのですが、忘れっぽいといった不注意や動き回ることをコントロールできない多動、自分の感情や行動、発言を抑えられない衝動性もあります。
一番の問題は、就学したときにじっと座っていられないこと。幸い、ADHDは薬が効くので、学校での問題行動は少し抑えることができます。
――親としてはどんな心構えでいるといいでしょうか?
山口:学校の授業では集中力に欠ける一面がありますが、コンピュータやゲームには没頭しやすく、その集中力はすさまじいです。画面上の制限された環境ならば、他に気をとられないため、夢中になることができます。
そのため、その子の特性に合わせて勉強できる環境を整えてあげることも大事かもしれません。
また、安全面において、知らない人についていかないように注意してあげてほしいですね。
ディスレクシアの特性と親の心構え
――ディスレクシアとはどのような症状があるのでしょうか。
山口:ディスレクシアは知的機能に問題はないのですが、読み書きだけができない学習障害のひとつです。
俳優のトム・クルーズなどもこの障害をもっていることで有名ですね。視覚的なものが苦手か、聴覚的なことが苦手か、大体はどちらかに分かれるようで、小学校に入ってから気づくことが多いです。
――親は、どのように接してあげたらいいのでしょうか?
山口:まずは、できないことにはこだわらないことが大切です。読み書きが苦手なら文章を録音して聞くなど、色々なやり方があります。その子の苦手な部分を補える方法を教えてあげることが重要だと思います。
まとめ
山口さんのお話を聞いていて印象的だったのは、「発達障害は一つの個性の広がりで、私たちの中に存在する側面でもある」ということ。
診断はされなくても、人づきあいが苦手だったり、集中力に欠けていたり。特別ではなく、誰でも持ちうる部分でもあるということです。
「ただ、発達障害児を育てる立場になったなら、子どもの訓練も必要ですが、対応の仕方、意識的な教え方など親の訓練も必要になってきます」と山口さん。
ちょっと個性的な子たちなので、「心に余裕をもって、専門家に何でも頼ること」、「自分も子どもも追い詰めないこと」が重要だそうです。
その子にとって、どのような生き方が一番幸せなのか。個性をきちんと見極めながら、家族みんなで話し合っていけたらいいですね。
●山口真美さん:中央大学教授であり、乳幼児の心と脳の発達を研究する心理学者。
著書は『発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ』(講談社)のほか、『美人は得をするか 「顔」学入門』(集英社)、『赤ちゃんに学ぶ 「個性」はどこから来たのか (あなたの「個性」はどこからきたのか 赤ちゃんに学ぶ)』(講談社)、『自分の顔が好きですか?――「顔」の心理学』(岩波書店)、『赤ちゃんは世界をどう見ているのか』(平凡社)など多数。