小学生には長めの90分のトレーニングの意味

-小学生にとって90分の練習時間は長くないのでしょうか?

田幸:小学生にとって90分ってすごく長いと思います。

ですので、90分間をしっかり動こうという長距離的な要素を踏まえつつ、5~20分刻みのプログラムの組み合わせの中に陸上の指導だったり、他のスポーツを入れたり、鬼ごっこなどの遊びを入れたりして集中力を保てるようにしています。

-たしかに、陸上競技に特化した練習ではない部分も多い印象を受けましたが・・・

柴田:はい、その通りです。特定の種目だけに特化してしまうと、その種目の中で得意不得意がありますし、子供も優劣を感じてしまいます。

球技は得意だけど走るのは苦手という子供や、球技は苦手だけど走るのは得意という子供が混在する場合、それぞれが主役になれるようなプログラムを組むことによって、みんなが楽しく頑張れる相乗効果を狙っています。

陸上競技以外のスポーツをやっている子供もアカデミーには多く参加しています。体験も随時行っているので、ぜひ多くの方に参加してほしいですね。

田幸:U-12のうちは専門種目に特化するのではなく色々な動きを幅広く取り組んでいくことで、トップチームに入れるような選手が生まれたらいいなと思います。

さらにいえば、マラソンの道に進まなくても、色々な動きを取り組むことは子どもの成長に必要だと思います。

自主性を作る

-U-15では明確な目標を持たせていましたが、U-12の選手に意識付けしていることはありますか?

柴田:自主性ですね。例えば、練習の終わりに「今日の練習の内容」や「発見したこと」などについて、みんなの前で発表する「振り返り」という時間を作っています。

トレーニングを「やらされる」のではなく、目的を持って自主的な気持ちで取り組めるようするためです。

田幸:自主性はU-15でも大切にしています。

アカデミーの練習は、U-12は週1回で、U-15でも週2回です。その他の日は、部活や他の習い事をやっている選手もいますので、こちらから日課のトレーニングメニューを出すことはありません。

ですが、U-15の選手には練習日誌をつけるよう指導しています。「今日、自分がどんな練習をやって、どうだったか?」ということを自分で考える習慣をつけることを大切にしています。

我々は、その内容を見て必要なアドバイスをするようにしています。アドバイスに対して選手が取り組むかどうかは本人の意思で、特に強制はしません。

-選手の成長に自主性はどのように影響するのでしょうか?

柴田:本人が自分が強くなっていることを実感すること=自主性が育っていると感じます。

ある選手に、腕ふりを直した方がいいよ、とアドバイスしたら、その選手はそれまで日誌上の自主トレーニングが0だったのに、その日を境に練習日誌に「腕ふり」と書くようになりました。

腕ふりを続けて、その選手がトレーニングのタイムなどで成長を実感した翌週からは腕ふりに加え、他のトレーニングをプラスして自主的にトレーニングするようになっていきました。

U-12の子どもたちにも、3ヶ月に1回成長の記録としての「成長シート」を渡していて、そこに走り方のアドバイスなどを載せています。

自身で出場する大会の前に見直して家で練習してから大会に臨んだところ、いい結果がでた、といううれしい報告も聞きました。

このように選手がトレーニングを重ねることで手ごたえを感じてくると、小学生からでも自分で積極的にトレーニングを始めるようになります。

田幸:ある程度の強制力は必要ですが、そればかりではなく選手が自主的に考えたり、動いたりするようになるきっかけをアカデミーの練習を通じて提供していきたいと思っています。