2016年9月 スマートフォン シリーズ別販売台数トップ20

10月7日、総務省は、今年3月に策定し、4月から運用を開始した「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」に沿わない行き過ぎた値引きがあったとして、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクに対し、総務大臣名で厳重注意を行い、再発防止策などを今月末までに報告することを求めた。

3社とも、今回の行政指導を真摯に受け止め、すみやかに是正を図り、再発防止に努めていくという旨のコメントを発表した。ただ、「値引き」の方法や実施時期はそれぞれ異なり、端末の購入代金の割引き、または端末の購入を条件として経済上の利益(電子マネーのチャージ、ポイント付与など)を提供するクーポンを送付する、という点は共通だが、ドコモは、自社のクレジットカード「dカード GOLD」(年会費税別1万円)の特典の一つとして提供していた。

具体的には、「ケータイ購入ご優待券」として、新規契約者には、携帯電話の購入時に利用できる5000円分のクーポン、既存契約者に対しては年間100万円のカード利用に対して1万円、年間200万円のカード利用に対して2万円のクーポンを送付。この優待の内容に魅力に感じ、カードに加入したユーザーも多いだろう。

ドコモは、「指導を受けた『ケータイ購入ご優待券』は、dカード GOLD会員向けの施策であり、クレジットサービスの魅力度向上を目的として一定のお客様負担に基づいて発行しているもの」と前置きした上で、「電気通信ビジネスの一環で実施されているような一般的なクーポンとは性質が異なるものと考えており、ガイドラインの趣旨に鑑みても、その趣旨に反するようなものではないと考え、実施してまいりました。しかし、今回の『不適切な端末購入補助にあたる』との指導については真摯に受け止め、今後、適切な対応に努めてまいります」とコメントしている。

総務省は、携帯電話事業者に対し、通信料金の高止まり、端末購入補助を受けない利用者との不公平、MVNO(仮想移動体通信事業者)の新規参入・成長の阻害を招くおそれのある高額な端末購入補助の適正化を求めてきた。また、公正取引委員会(公取委)は今年8月、「携帯電話市場における競争政策上の課題について」と題した報告書を公表し、ガイドラインより踏み込んだ、独占禁止法違反のおそれがある行為の具体例を示した。背景には、一時より下がったとはいえ、依然として、常にスマホ全体の35%を超えるシェアを占めるAppleの寡占を是正する目的があるとみられる。

・スマホ販売に関する独禁法違反行為の具体例

・公取委が公表した「報告書」の狙いは?

伸びるSIMフリースマホ 9月のランキング上位20機種の4分の1を占める

家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、主要4キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク・Y!mobile)が販売するSIMロックあり(解除対応含む)のスマートフォンの販売台数は、今年1月~9月までの累計で、前年同期比97.7%とほぼ前年並みなのに対し、SIMロックフリースマートフォンは前年同期比135.2%と、大幅に伸びている。

スマートフォン全体の販売台数に占めるSIMフリースマホの割合は、iPhoneの新モデルが発売された影響で、今年9月は14.2%にやや低下したが、8月は過去最高の18.9%を記録した。今年9月のスマホ全体のシリーズ別ランキング1位は「iPhone 7」でシェアは30.6%。SIMフリースマホでは「Huawei P9 LITE」の8位が最上位だった。

端末販売の面で、MVNOが成長する下地は整いつつある。しかし、肝心の通信料金は高止まりが続く。9月にソフトバンクが月20GB/30GBの大容量プラン「ギガモンスター」を発表すると、au、ドコモも追従し、ヘビーユーザー向けの大容量プランでは、1GBあたりの単価は、従来の5GBプランの税別1000円から300円(20GBプランの場合)に大幅に下がったものの、最も安い2GBプランは据え置きで、最低利用料金は下がっていない。「スマホ販売適正化」の本来の目的が達成するまで、主要3キャリアにとっては厳しい局面が続きそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。