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 1920~30年代のニューヨークを舞台に、『天使よ故郷を見よ』などを残し、37歳でこの世を去った作家トマス・ウルフ(ジュード・ロウ)と彼を支え続けた編集者マックス・パーキンズ(コリン・ファース)の関係を、実話を基に映画化した『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』が公開中だ。

 本作は、原題の「天才」が示す通り、あたかも『アマデウス』(84)のモーツアルトとサリエリのような、天才と凡人、表現者と理解者の屈折した関係を浮き彫りにしながら、名作誕生の裏に隠された友情と葛藤、闘いを描いている。

 ウルフとパーキンズの関係は、親子のようにも見えるが、ある時は同志、またある時は友人、恋人のようにも見えるという具合に一筋縄では語れない。ただ、変わり者で孤独な彼らが引かれ合うという構図はユニークなものとして映る。

 また、ウルフの原稿に情け容赦なく駄目出しをしながら、自分は正しいことをしているのかと悩むパーキンズ、二人の関係に嫉妬するウルフのパートナー(ニコール・キッドマン)とパーキンズの妻(ローラ・リニー)の姿も描かれる。

 彼らの姿を通して、ウルフの人を引きつける魅力や作家としての才能、業や性(さが)を際立たせるという手法が秀逸だ。ウルフを中心に微妙に絡み合う人間関係を見事に表現した4人の名優による演技合戦も見ものとなる。

 さらに、パーキンズが担当したF・スコット・フィッツジェラルド(ガイ・ピアース)とアーネスト・ヘミングウェー(ドミニク・ウェスト)を登場させて、作家とは、文学とはというテーマを掘り下げ、物語に厚みを加えている。

 ミュージシャンのボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞して話題になっている今、本作を見て、改めて文学について考えてみるのも一興だ。(田中雄二)