大野和士オペラ芸術監督

新国立劇場2020/2021シーズンラインアップの発表会見が開かれ、オペラ部門は、芸術監督として3シーズン目を迎える指揮者・大野和士が出席した(1月8日)。新制作上演は次の4本。

●ブリテン《夏の夜の夢》(2020年10月)
●藤倉大《アルマゲドンの夢》(2020年11月)※世界初演
●ストラヴィンスキー《夜鳴きうぐいす》/チャイコフスキー《イオランタ》(2021年4月)
●ビゼー《カルメン》(2021年7月)

大野が芸術監督就任時に掲げた施策には、隔年で行なうプロジェクトが含まれており、来シーズンはその1年目の企画枠が戻ってくることになる。そのひとつが日本人作曲家への創作委嘱シリーズ。今回大野は、いま世界が最も注目する作曲家である藤倉大に狙いを定めた。《アルマゲドンの夢》は、20世紀初頭の「SFの父」H.Gウェルズの『世界最終戦争の夢』が原作。藤倉のオペラ3作目だが、日本で演出付きで舞台上演されるのはこれが初めて。指揮は大野和士。演出は2018年ザルツブルク音楽祭の《魔笛》が注目を浴びたアメリカの女性演出家リディア・シュタイアー。英語台本なので海外上演の可能性も含めて注目される。

上演順が前後するが、シーズン開幕を飾るのはブリテンの《夏の夜の夢》。大野は「20世紀オペラは難解で敷居が高いと思われがちだが、底抜けに明るい喜劇、幸せになる現代オペラもあることをアピールしたい」と意図を述べた。プロダクションは2004年にベルギーのモネ劇場で初演され高評価を得ているデイヴィッド・マクヴィカー演出の舞台。新国立劇場が権利を買い取った。今後は他劇場へのレンタルも含めて、新国立劇場の所有レパートリーとなる。指揮はイングリッシュ・ナショナル・オペラ音楽監督でブリテンのスペシャリスト、マーティン・ブラビンス。

2021年4月の《夜鳴きうぐいす》と《イオランタ》の2本立ても、隔年プロジェクトであるダブルビル第2弾。「童話」つながりの2作品だ。さらに今回は、これも大野が掲げる「ロシア・オペラの充実」という方針の一環でもある。

新国立劇場として4度目の新制作となる《カルメン》の演出を手がけるのは、スペインのアレックス・オリエ。昨年の新国立劇場と東京文化会館共同制作の《トゥーランドット》では、スケール大きな舞台装置と、姫が自ら命を絶つショッキングなラストシーンが大きな話題となった。大野は「オリエは、室内楽的、内面的な精神の変化を描きたいと言っている。昨年の《トゥーランドット》とはまったく視点の異なるビジュアルの演出になるはず」と語った。

レパートリー作品も、臼木あいのスザンナ、脇園彩のケルビーノと、日本人歌手の活躍に期待が募る《フィガロの結婚》や、わが国のワーグナーの第一人者で前芸術監督の飯守泰次郎が指揮する《ワルキューレ》はじめ、充実のラインアップ。

取材・文:宮本明