舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』 舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』

草なぎ剛が主演を務める舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』が1月11日からKAAT神奈川劇場大ホールにて開幕した。本作は、ドイツ演劇の巨匠ベルトルト・ブレヒトの作品で、ヒトラーが独裁者として上り詰めていく過程をシカゴのギャングの世界に置き換えて描いている。

初日を前に取材に応じた草なぎは、直前まで調整が続いていることを明かし、「最後までたどり着けるかどうか…膨大なセリフの量で正直まだ覚えきれていない…」などと不安な心境を覗かせながらも、「見どころは本当にすべてだと思います。ちゃんと出来たら、すごくエンターテイメント性の高い、いい作品になるのではないか。みんなで毎日毎日頑張ってきたので、僕らにしか出来ない『アルトゥロ・ウイの興隆』が届けられると思います」と決意を語った。

演出を務めるのは、草なぎと2018年に『バリーターク』でタッグを組んだ、白井晃。草なぎについて、白井は「私が色々とお願いすることに対して、正面からぶつかっていただいていて、どんどん『アルトゥロ・ウイ』というギャング団のボスになりきっていただいている。剛さんは、人の気持ちを引き寄せるチャーミングな面をお持ちなので、役どころにもあっている。チャーミングだけれど、最後には怖くて恐ろしい剛さんを見られると思います」と全幅の信頼を寄せていた。

劇中の音楽は、キング・オブ・ソウルと呼ばれるジェームス・ブラウンの楽曲を中心に構成され、ファンクバンドのオーサカ=モノレールが生演奏する。白井は「ヒトラーが人々の気持ちを盛り上げるために、ワーグナーの曲を利用したように、今回はジェームス・ブラウンの楽曲を盛り込んだ。それと一緒に(草なぎが)歌い、踊り狂う姿がまた見どころ」と話している。

上演時間は約3時間5分(途中休憩あり)。作品ではヒトラーの政権掌握からオーストリア併合までの史実を扱い、合間で字幕による説明も入るが、あくまで設定はシカゴのギャング団の話。華やかなショーでありつつ、それでいて重厚な芝居も見せつけられる。1幕から最後に幕が閉じるその瞬間まで続く、熱狂、狂気、不思議な高揚感、そしてそれを止められない恐怖の感覚。主演の草なぎの白熱した演技はもちろん、共演する古谷一行、神保悟志、渡部豪太、松尾諭、小林勝也など、個性豊かな俳優たちの芝居もいい。

草なぎは「白井さんとまた私、草なぎ剛がタッグを組んで、今までにないにないような草なぎ剛が見られると思います。白井さんの演出もまた新しく斬新でとても痺れる感じになっていますので、ぜひとも皆さんよろしくお願いします」とコメントしている。

公演は2月2日まで。

取材・文・撮影:五月女菜穂