英国の名門フィルハーモニア管弦楽団。1月23日(木)からの来日公演にさきがけて、最新デジタル技術による「VR(ヴァーチャル・リアリティ)サウンド・ステージTokyo」を実施している。360度の3D映像とサラウンド音響で、リアルなオーケストラ演奏を間近に体感できるというもの。

「フィルハーモニア管弦楽団」来日公演のチケット情報

演目は2017年にロンドンのロイヤル・フェステイヴァル・ホールでライヴ収録したマーラーの交響曲第3番。1983年にサロネンが代役で急遽フィルハーモニア管を指揮し、その後の首席指揮者就任のきっかけとなった作品だ。

会場内には15脚の回転椅子。VRゴーグルとヘッドフォンをつけると映像が始まる。冒頭に上述の出会いのエピソードを語るサロネンの肉声が流れ、すぐに演奏へ。いきなり目の前にサロネンが現れた。譜面台を挟んでサロネンと向かい合う位置に座った格好。このプログラムの売りが、視界360度の3D映像だ。そのための回転椅子。ぐるぐる回って周囲を見渡すと、自分がオーケストラに囲まれているのがわかる。

演奏は第6楽章の最後の6分ほど。映像同様、音声もサラウンドなので、たとえばフルートの聴こえる方向を振り返れば、そこにフルート奏者がいる。弾いているパート、休んでいるパート、旋律の受け渡しなどが、文字どおり目に見えるようで、スコアを見ながら聴いているような感覚。あまりにリアルなので、奏者や客席最前列のお客さんがこちらを見ているような気がして、なんだか照れくさい。壮大なコーダで曲を閉じると、盛大な拍手に応えてオーケストラ全員が立ち上がる。自分だけ座ったままではまずい!と本気で焦った。
「VRサウンド・ステージTokyo」は東京芸術劇場地下1階アトリエウエストで1月29日(水)まで(1月20日(月)・21日(火)は休館日)。1日14回上映されるが、各回限定15名。当日整理券またはWEB予約が必要。詳細はホールHPへ。

さらに、東京芸術劇場前の池袋西口公園に誕生した野外劇場「グローバルリング」では、関連イベント「TOKYO MUSIC EVENING “YuBE”(ユーベ)」が開催中(1月31日(金)まで)。VRと同じマーラー交響曲第3番の通常の2D映像を大型スクリーンとサラウンド・スピーカーで上映するもので、こちらは第6楽章まるまる(約30分間)が流れる。VRと同じコンサートの映像で、さっきたしかに座っていた感覚のある場所に自分がいないのが、なんだか不思議。特殊なサラウンド音響効果を作り込んだりはしていないようだったが、マルチ・スピーカーのおかげで、リング内のどこで聴いても良好な音響で楽しめる。上映は期間中の毎晩、午後7時と午後8時30分の2回(予約不要・入場無料)。野外なので防寒対策はお忘れなく!

そして1月23日(木)からは、いよいよ公演が始まる。サロネンとフィルハーモニア管弦楽団の集大成を、今度は生身で!

取材・文:宮本明