会見より。左から、中山欽吾 東京二期会常務理事、シモーネ・ヤング、カロリーネ・グルーバー、キャストの清野友香莉、近藤圭 会見より。左から、中山欽吾 東京二期会常務理事、シモーネ・ヤング、カロリーネ・グルーバー、キャストの清野友香莉、近藤圭

東京二期会オペラ劇場で11月に上演される《ナクソス島のアリアドネ》(R.シュトラウス)が現行の形で初演されてから今年でちょうど100年。指揮シモーネ・ヤング、演出カロリーネ・グルーバー。二期会の歴史で初めてという、女性コンビによる上演だ。来日したふたりが記者会見に臨んだ(10月27日)。

「ナクソス島のアリアドネ」チケット情報

ヨーロッパの主要歌劇場で華々しいキャリアを築いているヤングの来日は、2003年にNHK交響楽団を指揮して以来13年ぶり。個性的なキャラクターが次々に登場し、室内規模の36人編成のオーケストラとともに緊密な音楽の流れを紡ぎ出すこの作品を、「オーケストラと歌手とが互いに作り合う、宝石のような音楽。そして芸術の、シリアスなばかりではない、明るい面を提供できる楽しい作品」と評す。また、「一生懸命な若い人たちと楽譜に深く入り込んでゆくのは楽しい作業だ」と、2日前から始まっている歌手たちとのリハーサルの感触を語った。

一方のグルーバーも、ドイツのオペラ専門誌で2度にわたって年間最優秀演出家にノミネートされている注目の存在だ。今回の舞台は2008年にライプツィヒ歌劇場で初演したプロダクション。物語はオペラの楽屋裏ばなしで、オペラ上演を巡って主催者の気まぐれに振り回される音楽家たちの困惑をコミカルに描いたプロローグと、劇中劇として演じられるそのオペラ《ナクソス島のアリアドネ》本編から成る。グルーバーは「実に多層的に多くのテーマが隠れている。それをバラバラにではなく、わかりやすくひとつにすることを心がけた」という。プロローグが見すぼらしい殺風景な地下のスペースで演じられるのは、芸術家がいかに粗末に扱われているかを象徴しているのだそう。

会見後には立ち稽古の一部が報道陣に公開された。コロラトゥーラの高度な技術が要求される難曲として知られるツェルビネッタのアリア〈偉大なる王女様〉にも、ステージ上を広く使った、そして細かい表情の演技が次々と指示されてゆく。突っ立って歌うだけでも難しそうなのに…。しかし観る側にとっては楽しさ倍増。1か月後に完成する舞台の多彩さを大いに期待させた。

折しも来日したウィーン国立歌劇場が同演目を上演したばかり。この作品の異なる演出による舞台を、ひと月と置かずに同じ都市で観られるのは、世界的にもかなりレアな出来事のはずだ。

公演は11月23日(水・祝)・24日(木)・26日(土)・27日(日)の全4回(初日のみ17時、他は14時開演)。いずれも東京・有楽町の日生劇場で。

(宮本明)

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