バレエ・コスチュームの初音ミク (c)Crypton Future Media, INC. www.piapro.net バレエ・コスチュームの初音ミク (c)Crypton Future Media, INC. www.piapro.net

今年5月に逝去した作曲家/シンセサイザーアーティストの冨田勲の遺作『ドクター・コッペリウス』がプロジェクトチームにより制作され、11月11日(金)・12日(土)の追悼特別公演で初披露される。10月26日に開かれた制作発表記者会見でその全貌が明らかになった。

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『ドクター・コッペリウス』は、亡くなる1時間前まで打ち合わせをし、冨田が上演を最期まで夢見て創作し続けていた作品。“日本の宇宙開発・ロケット開発の父”と呼ばれ、バレエダンサーでもあった糸川英夫博士の「ホログラフィと一緒に踊りたい」という夢を形にするとともに、『イーハトーヴ交響曲』(2012年)のときに生のオーケストラ演奏で歌い踊ったボーカロイド・初音ミクにバレエ作品『コッペリア』を踊らせたいという冨田の思いが詰まった壮大な交響曲。オーケストラとシンセサイザー、バレエとホログラフィを融合させた“スペースバレエシンフォニー”となる。

今回は、3Dで浮かび上がるバレエの衣装に身を包んだ初音ミクが、バレエダンサー風間無限とともに“パ・ド・ドゥ”を踊り、歌う。演出/エレクトロニクスのことぶき光は「映像は当日をお楽しみ」と明言を避け、振付の辻本知彦は「一番最後の曲はとてもいい振付になったと自負してます」と満足の表情でアピールした。

1970~1980年代に冨田が制作した音源が入ったオープンリールテープもこのたび発見され、「再サンプリングしてかなりの場所で使います」とことぶき光。楽章の構成は7楽章。ストーリー原案とほとんどのサウンドファイルが遺されていたが、第1楽章と第2楽章はテーマや歌詞が遺されているのみ。プロジェクトチームから冨田氏へ思いを捧げる第0楽章『飛翔する生命体』を冒頭に据え、1と2は欠番となる。指揮の渡邊一正は「リハーサルはこれから。わくわくしています」と笑顔で語った。

既存の楽曲を素材として用い、新しい世界観を作り上げるのが冨田の手法。本作には、ヴィラ=ロボス『ブラジル風バッハ』やレオ・ドリーブ『コッペリア』、ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』、最後の劇場用映画音楽となった映画『おかえり、はやぶさ』メインテーマが素材として用いられ、新しい世界を作り上げている。

当日は、『ドクター・コッペリウス』のほかに、『イーハトーヴ交響曲』、冨田の代表作である『惑星 Planets』(1977年)のリミックスも披露される。冨田勲 追悼特別公演『ドクター・コッペリウス』は11月11日(金)・12日(土)に東京・Bunkamuraオーチャードホールにて開催。チケット発売中。

取材・文:門 宏