俳優を目指したからには本物になりたい

撮影:小嶋文子

――牧野を演じる上で大切にしていたことはなんでしたか?

商売として使われている顔。僕もよく目が笑ってないって言われるんですけど(笑)、陶芸王子を演じているときは、目が笑わないようにというのは意識してました。彼にとって王子として振る舞っているときは本当に楽しくはなくて、一番楽しいのは土を触っているときなんですよね。

みんなから写真をせがまれたり、キャーって言われたりすることが幸せなんじゃない。もてはやされるのが幸せなのか、自分のやりたいと思っていることを自由にやれることが幸せなのか。彼はたぶん後者なんだろうなって。

――俳優の仕事はそのバランスが難しいですよね。人気商売と言われるだけに、お芝居だけやっていればいいわけでもないですし。

やっぱり俳優をやっている以上、お芝居ができる人になりたいし、ちゃんとその作品の力になりたい。そこは俳優を始めたときから思っていることで、目指したからには本物になりたい、っていうのはすごく思っています。

でも悩みますよね。キャーって言われることも嬉しいことではあるし。ただそれが本当の幸せなのかって考えると、僕の一番は死ぬまで俳優をやれることだと思うから。それ(もてはやされること)だけが先に行ってしまうのが、一番良くないなとは思いますね。

撮影:小嶋文子

――では、今、お仕事をしていて楽しい瞬間は?

やっぱり作品に入り込んでる時ですね。僕の人生より役の人生の方が絶対に面白いので(笑)。そっちの方が心が動く。生きてる感じがするんですよね。悪い意味ではないんですけど、俳優って自分を殺していかなきゃいけないことが多いというか。

――そうですね。常に人の目に触れていますし、普通に遊んだりするのも気にしなくちゃいけないことも多いでしょうし。

共演した仲間とご飯に行くって言っても個室を選ばなくちゃいけないとか、休みの日って言っても台本は開いてなきゃいけないとか。もう死んでいくんですよ(笑)。だからこっち(役)で生きなきゃっていう反動がすごい。

役でいるほうが「生きてるな!」ってなる。だからそこで本当に痺れるシーンが撮れたときには、「これはヤバイ!」みたいな感覚になります。

――役者のお仕事は天職ですね。

本当にそうです。本当に運がいいなって思います。