マキシム・ミロノフ  (c)Naoko Nagasawa マキシム・ミロノフ  (c)Naoko Nagasawa

ロッシーニで一番有名なオペラ『セビリアの理髪師』がまもなく新国立劇場で上演される。今回はオペラのフィナーレを飾るアルマヴィーヴァ伯爵の超絶技巧アリア「もう逆らうのをやめろ」が歌われると話題になっている。この曲に挑むテノール歌手のマキシム・ミロノフに話を聴いた。

新国立劇場オペラ『セビリアの理髪師』チケット情報

「このアリアは、例えて言えばレオナルド・ダ・ヴィンチの展覧会に『モナリザ』が入っているようなものなんです。それがなくてもダ・ヴィンチの偉大さに変わりないけれど、やはり『モナリザ』を観られれば感動が違いますよね?」

「『セビリアの理髪師』というオペラは今からちょうど200年前に生まれました。でも、そこに書かれている音楽は永遠に不滅です。長年上演されているうちに、時代の影響で音楽が重たくなったり、難しいアリアをカットしたりして本来の姿がゆがめられていましたが、近年のロッシーニ研究でこのオペラの真価を聴くことが出来るようになってきました」

「もっとも重要なのがオペラを締めくくるアルマヴィーヴァ伯爵のアリアです。物語は僕が演じるアルマヴィーヴァ伯爵が、様々な困難を乗り越えて愛する人と結ばれるまでを描いています。このオペラは彼の成長物語でもあるのです。初演した歌手が優秀だったのでロッシーニは彼のためにオペラのフィナーレに「もう逆らうのをやめろ」という超絶技巧のアリアを書きました。ところがあまり難しいのでこのアリアはカットされることが多かったんです。最近はロッシーニ歌手の技術が進んで僕を含めてこのアリアを歌う場合が増えてきました。『セビリアの理髪師』という作品の価値をより輝かせる名曲です。日本のお客さんにもぜひ聴いていただきたいです」

演出は人気の高いヨーゼフ・E.ケップリンガーだ。「規模が大きく仕掛けがたくさんある、とても良いプロダクションです。カラフルでモダンなのにオペラのストーリーをきちっと伝えているところが素晴らしいと思います」

ミロノフはロシア出身だが、今やロッシーニ歌手として世界中で活躍している。「日本に来る前にはウィーン国立歌劇場で『ラ・チェネレントラ(シンデレラ)』を歌っていました。日本の次はイタリア、次はスイス、次はフランスと、来年も僕が歌うオペラはほとんど全てロッシーニです。自分で自分のことを『ロッシーニ大使』と呼んでいます(笑)。」ロッシーニを世界に広めるロッシーニ大使が歌う名アリア、お聴き逃しなく!

11月27日(日)から12月10日(土)まで東京・新国立劇場 オペラパレスにて。チケット発売中。

取材・文:井内美香