「ほっと一息つこう」アラートに癒やされた

「iPhone 7/7 Plus」と同時にAppleが発表したスマートウォッチ「Apple Watch Series 2」は、新たにGPSを内蔵し、iPhoneと一緒に持ち歩かなくとも、歩数などを正確に記録できるようになった。50mの耐水性能も備え、コンセプトは「フィットネスと健康」だ。

実際に使ってみて、初代Apple Watchは、販売店にとって、iPhoneとのセット提案すら厳しい、売りにくい商品だったのではないかと感じた。進化した第2世代の「Series 2」で、ようやくセットで使う意味が見いだせるようになった。今回は、主要機能をざっくりと紹介しよう。なお、iPhone 5以降と組み合わせて使えるモバイル決済サービス「Apple Pay」は、時間の都合で、まだ試していないので、後日、改めて紹介したい。

Appleの理想が詰まったApple Watch

単刀直入にいうと、Apple Watchはなくても困らない、あっても特に困らない、ファッションアイテム同様の「自分のため」のアイテムだと感じた。外食や食料品はもちろん、スマートフォンなどのモバイル機器、家電まで、何でも「コスパ」が重視される昨今、ときには、それから外れた”散財”をしたくなるもの。Apple Watchの狙いは、売り上げの大部分を占め、もはや失敗が許されないiPhoneでは難しいトライ&エラーと、Appleが理想とするステイタス感の追求にあるかもしれない。

活動量を自動で計測・記録 運動に応じた消費カロリーも簡単にわかる

さっそく、具体的な機能を紹介しよう。一つは、アクティビティ機能。歩数、距離、消費カロリーなどを日々、自動的に記録する機能だ。活動量は、時間ごとに記録され、連携するiPhoneの「アクテビティ」アプリ上で視覚的に確認できる。

2歳の子どものいる筆者は、平日は朝4時半~6時の間に起床し、趣味のインターネットや仕事、家事を行った後、電車に乗車して出社。日中はずっとデスクワークだ。保育園に寄って子どもを引き取った後、帰宅し、再び家事や翌日の準備などを行い、子どもを寝かしつけてから夕食・就寝、という毎日。よく歩く時間帯と、座っている時間帯が分かれているため、その差がはっきりとわかるグラフになった。

計測結果によると、平日のある日(11月11日)の消費アクティブカロリーは432カロリー、エクササイズは38分、スタンド(1時間に1分以上立った時間)は10時間、歩数は1万708歩、距離は7.87km。歩数と距離は日によって変わり、別の平日(11月8日)は8447歩で6.31kmだった。平日の歩数はおおむね7000~8500、距離は6km台。休日は、家事や買い物にかける時間が多いため、体感通り、平日より活動量は多く、1万歩を超える日もあった。日々の行動が数字で可視化されると、なかなか興味深い。

休日には、ランニングやスイミングなどのトレーニング結果を記録するワークアウト機能も試してみた。運動する習慣がないため、自転車で出かけた際に「サイクリング」、買い物時などに「ウォーキング」「室内ウォーキング」を設定。プリセットのなかからトレーニングメニューを選び、目標の消費カロリーをセットすると、カウントダウンが始まり、カロリーや時間、平均心拍数などを自動的に記録。さらに、「サイクリング」「ウォーキング」では、平均速度/平均ペース、実施場所、経路、当日の天気も記録された。

消費カロリーや歩数がわかると、確かに健康や運動に対する意識は高まる。トレーニングはもちろん、カジュアルにダイエットしたい人こそ、活動量計は役に立つだろう。

「ほっと一息つこう」アラートに癒やされる

バージョンアップした「watchOS 3」の新機能として、動き回っていると、「深呼吸して休憩しましょう」、ずっと座っていると「スタンディングしましょう(立ちましょう)」とブルッと振動して通知する。特に前者は、時間のある休日に掃除や買い物をまとめてやろうと思い、限界を超えて疲労困憊になりがちだった自分にとって、救いのアラートになった。

1時間座ったままの状態でいると、立つように促すアラート機能は、Appleの広報によると、「座り過ぎは健康に悪影響を与える」という研究成果にもとづいて開発したものという。デスクワーク中心のビジネスパーソンにはぴったりの機能だ。

通知される前に、自らアプリを起動して、心を落ち着かせることもできる。新たに加わった「深呼吸」アプリは、Apple Watch本体の振動にあわせて息を吸って吐き出すだけというシンプルなアプリ。間隔や継続時間はあらかじめ設定でき、グリーン系の落ち着いたカラーとメッセージに癒される。

操作方法はかなりわかりにくい 今後の改善に期待

基本的な操作は、側面にあるデジタルクラウンとサイドボタン、文字盤が表示される感圧タッチ対応OLED Retinaディスプレイを使う。画面の明るさを示す数値は1000ニトで、現行のApple製品で最も明るいという。

時計の文字盤の種類は多く、デザインの細かなカスタマイズより、事前に設定しておけば、1分単位で、文字盤に表示される時刻だけ早められる、デジタルならではの機能が便利だと感じた。

音声アシスタントの「Siri」にも対応しており、サイドボタンを長押しするか、「Hey Siri」と呼びかけて操作できる。しかし、「iPhoneで検索してください」と返答されることが多く、あまり役に立たなかった。一方、メッセージアプリ「iMessage」の音声入力はほぼ完璧だったので、入力補助の一環とみなしたほうがよさそうだ。

iPodやiPhoneに初めて触れた際は、事前に得ていた情報だけですぐに使えたが、Apple Watchは、iPhoneとのペアリング設定以降でつまづき、紙の説明書を何度か読み返して、ようやく使い始めることができた。直感的とは言い難く、操作体系や設定方法は、まだ改善の余地があるだろう。

時間管理や健康への意識を高める「自分へのご褒美」アイテム

Appleの広報によると、2015年3月に発売した初代モデルは、腕時計としては単価が高いこともあり、1年間で、高級腕時計のロレックスに次ぐ、世界2位の売上高を記録したという。最新モデル「Apple Watch Series 2」の税込み価格は、最も安いケースとバンドの組み合わせでも4万円台。セラミック製ケースを採用した上位モデル「Apple Watch Edition」、エルメスとのコラボレーションモデルは10万円以上だ。

価格に見合った実用性があるとは言い難いが、平日は1分の帰宅時刻の遅れすら惜しい自分にとっては、「自分へのご褒美」として投資してもいいと感じた。何より、「スマートフォンがあれば腕時計は要らない」という長年の認識は過ちだったと痛感させられた。

Apple Watch以外にも、「時間管理」や「健康」にフォーカスした腕時計型ウェアラブル端末や、リストバンド型の活動量計が続々と登場している。しかし、なかなか普及しない状況は、細かいことを気にせず、毎日のんびりと過ごす人が意外に多い裏返しといえるかもしれない。(BCN・嵯峨野 芙美)