東京創価小学校で開催された「e-ネットキャラバン」

総務省が7月に発表した「平成27年通信利用動向調査の結果」では、スマートフォン(スマホ)の個人保有率が5割を超えた。調査では、年代別のスマホでのインターネット利用率も発表しているが、6~12歳で32.8%、13~19歳で78.3%と若年層の高まりが顕著だった。

インターネットはすでに生活から切り離すことができないインフラだが、ある程度のリテラシーを持っているはずの大人でも落とし穴にはまる危険性をはらんでいる。子どもならなおさらで、オンライン上のトラブルは年々増加傾向にある。

こうした状況に対策すべく、総務省と文部科学省の働きかけで発足し、全国携帯電話販売代理店協会をはじめとした協力企業が開催しているのが「e-ネットキャラバン」だ。

学校からの申し込みを受けて講師を募り、保護者・教職員、小学生~高校生向けに正しいインターネットとの付き合い方を啓発するガイダンスを実施している。

11月21日には、東京都小平市にある東京創価小学校の小学6年生に向けた講義が開催された。テーマは「インターネットの安心安全な使い方」だ。

スマホはすでに身近な存在 求められる高度なリテラシー

講師を務めたのは、協力企業の富士通パーソナルズリテールサービスの井上崇泰氏。ドコモショップ東久留米店の店長でもある井上氏は、日頃からユーザーの悩みや問題と向き合っている。

開始まで生徒たちには講義の内容は伝えられていなかったが、インターネットに関連する内容だと知ると、興奮した空気が伝わってきた。井上氏がインターネットの経験を問うと、ほとんどの生徒が一斉に手を挙げた。主な使用方法は動画視聴とゲームで、端末はもちろんスマホが大多数だ。

講義のトピックは大きく分けて七つ。ネット依存、ネットいじめ、個人情報、さそい出し・なりすまし、ネット詐欺、チェーンメール、著作権・肖像権。どれも生徒には高度すぎるのでは、と心配したが無用だった。どのトピックにも積極的に発言し、自分事として捉えている生徒も少なくなかったようだ。

なかには、「SNSに写真を投稿するときは、位置情報をオフにし、背景も家の位置が特定されないように気をつける」といった大人に通用するレクチャーも。オンラインというフィールドでは、子どもと大人ができる行動に差は少ない。その分、注意すべき事項も大人と変わらないというわけだ。

「ネットいじめ」に強い関心 学校側も懸念

最も関心を引いていたのは、ネットいじめについての講義。具体的なコミュニケーションツールとして「LINE」という固有名も児童や学校側からはあがった。スマホを使いこなす小学生は多いが、自分専用の端末をもつ生徒はまだ限られている。「LINE」だけでなくオンラインのコミュニケーションツールは、小学6年生にとって、近い将来に直面する期待と不安の対象だ。

井上氏は「ツールやネットを介したコミュニケーションツールの問題は大人になっても続く。文字だけのやりとりは勘違いされやすい。相手と直接コミュニケーションをとる方法を今のうちにしっかりと身につけなければ大変」と、生徒たちに警鐘を鳴らした。

また、自分のなかに抱え込んで問題を悪化させてしまうケースが多いことも指摘。「困ったときは、親や先生だったり、町の携帯ショップに相談してほしい」と、一人で抱え込まないようアドバイスした。

「LINE」をはじめとしたコミュニケーションツールについては、学校側からも事前に盛り込んでほしいという要望があったという。インターネット上の問題は表面化するまで大人には把握が難しい。それぞれの生徒がリテラシーや危機意識をもって、正しくインターネットと付き合ってほしいという思いがある。

同じ悩みを抱える学校関係者・保護者は多い。だが一方で、その大人たちの知識や考え方もまだ十分に成熟していないと井上氏は語る。「しっかりとした知識を身につけた上で『使い方のルールを決める』『フィルタリングを設定する』といった予防を行ってほしい」。

学生時代にインターネットがなかった世代にとって、子どもが現在直面しているのは未知の問題。先入観をもたず、正しい見識を新しく学ぶ姿勢は必要不可欠だ。インターネットを安全に活用できる社会の実現を目指し、「e-ネットキャラバン」は子どもと大人の双方に啓発活動を続けていく。(BCN・大蔵 大輔)