子どもや夫にイラっとしたり、怒りの感情をぶつけてしまったりすること、よくありますよね。

いったん怒り始めると、自分が止められなくなる……なんてこともありますよね?

子育てしていて、なんだか昔と比べてイライラしやすくなった、と感じる方は多いと思います。

今回は、そんな“イライラ”の感情を「脳」の観点からとらえ、怒りを上手にコントロールするコツを教えていただきます。

脳が知っている 怒らないコツ』(かんき出版)の著者で、小児科専門医でもある「脳の学校」代表・医学博士の加藤俊徳(かとうとしのり)医師にお話を伺いました。

体の緊張で思考力が弱まり、イライラが連鎖。寝不足や過去の出来事も原因に

加藤俊徳 医師

「母親が家の中でイライラする原因の多くは、旦那さん(笑)。それと、男の子をもっているお母さんもイライラしやすいです。

女性は比較的、話をよく聞けるのですが、男(の子)は人の話を聞かない。でも、自分と同じように、相手にも聞いてほしいという欲求が存在するから、『なんで話を聞いてくれないの!?』となる。

慢性的に怒りやすい人は、肩こりや頭痛、偏頭痛もちだったりします。さらに座ってばかりいると足がパンパンになり、その情報が脳の『思考系』の場所に刺激となって伝わります。

イライラしているときは大概、体のどこかが痛くなったり、寝不足だったりするのですが、そのときはすでに『思考系』のキャパシティが減っているんです。

そこに、考えられる枠が少ない状態で、新しい課題がガーッと入ってくると、『私わからない!』『対処できない!』となります。要するに『怒り』って、『わからない・対処できない・今困っている』というサインなんですね。

子どもの『イヤイヤ』も、『わからない』というサイン。言うことをよく聞いて、理解できれば『イヤイヤ』しません。

あとは、寝不足の解消ですね。旦那さんを待たずに寝てください。……と言っても、待っている人は今でも少ないとは思いますが(笑)。

今怒っているのは今の出来事のせいじゃない、ということも結構多いんです。生活のリズムだったり、朝の出来事だったり、昨日のことを引きずって、怒りやすくなったりもします。そういった、怒りの引き金になる部分を解消していくことも大事だと思います」

「脳の弱い部分」を刺激されると怒りやすい。怒ると脳が働かなくなる!

加藤先生によると、脳はおおまかな役割ごとに「思考系」「伝達系」「理解系」「運動系」「聴覚系」「視覚系」「記憶系」「感情系」と、8つの「脳番地」に分けられるそう。

あるものごとに対して、これらの各番地で「対応できない!」と感じると、不安になり、イライラや怒りの感情が生まれるといいます。

「脳の8つの番地のうち、『聞く』『見る』『理解する』『記憶する』は、すべて情報の受け身です。『運動する』『考える』『話す』は情報のアウトプットです。

ところが、『感情』の脳番地だけは、人の感情を受け取る、自分の感情を表出する、というインとアウトの両方にかかわっています。

そのため、聞こえない⇒怒る、見えない⇒怒る、理解できない⇒怒る、思い出せない⇒怒る、動けない⇒怒る、考えられない⇒怒る、伝えられない⇒怒る……というふうに、7つの脳番地のどれが弱くても、怒りやすくなってしまうのです。

人間は、弱いところからほころびてきます。弱いところを刺激されると、怒りになります。女性に向かって、『よく見ろよ、お前よく見てないだろ』と言うと、『ぐあぁーっ!』と怒りますよね(笑)。脳の方が敏感なんです。

苦手なところは脳が動かないので、脳が動かない瞬間って、嫌になるんです。嫌な感情は怒りの感情と混ざっていくため、怒りたくなったり、嫌だと思ったりするのは、どこかの脳が働かない、ということ」