子どもが自然に練習する環境はリビングにつくる

伊藤さん一家は、美誠さんが幼稚園に上がる頃、思う存分卓球の練習ができるように静岡県磐田市に引っ越します。家を建てるにあたり、美乃りさんがこだわったのはリビング。

家族が必ず通るリビングに卓球台を設置し、照明も卓球をするのに適したものを選んだそう。そのため、生活の中で自然と卓球をやろうという空気になったといいます。

もうひとつ、美乃りさんがこだわったのは、美誠さんが生まれたときの写真や家族の写真をリビングの壁に飾ること。

これらを見るだけで美誠さん自身が「自分は愛されている」と実感できるような風景を作ったのです。

写真だけでなくこれからの人生に役立つような言葉を書いた紙も貼っていたそう。幼い頃は意味がわからなくても、成長の中でその場面に遭遇したときに、ふとその言葉を思い出すことができるはず。

それだけではなく、練習がマンネリ化しているときには、優勝したときの新聞記事を貼って刺激を与えたり、リラックスしてほしいときはファッション誌の切り抜きを貼ったりすることもあるそうです。

何歳だろうがはじめて手にするものは本物を与える

美乃りさんは、美誠さんが幼い頃から、中途半端なことをさせるのはやめようと考えていました。そのため美誠さんの最初のラケットも正式なものを買い与えたそうです。

幼い子どもの場合、最初はお遊び程度のものを与えて様子を見るという人も多いかもしれません。しかし美乃りさんは、本物を知らなければ本物にはなれないといいます。

本物を与えることで子どもの可能性を広げることができるのです。それに、子どもの中にも「自分がやるといったからには、本気で取り組まなくてはいけない」という自覚が生まれるといいます。

もともと卓球選手だった美乃りさんは、美誠さんが4歳から12歳までの間コーチをつとめていましたが、とくに4歳から8歳までの間は1日最低7時間の練習をしていたそう。

厳しい練習をこなす中で、美誠さんの強いメンタルもつくられていったといいます。

本書では美乃りさんが行っていた習慣が具体的に語られています。子どもが夢を持ち、それに向かってまっすぐ進んでいくために親はどうあればいいのか、考えさせられる1冊です。

ライター。音楽系の出版社で6年間勤務した後、かねてからの目標であったアメリカでの短期留学を果たし、現地でフリーペーパー制作のボランティアを行う。帰国後は、実用書を扱う出版社にて女性エッセイや心理本などの編集を担当。その後、ライターとしての活動を始める。北欧のヴィンテージ食器が好き。