【格闘技】日本人ファイターのUFC挑戦に見る日米MMA格差

MMAの世界最大にして唯一のメジャーUFCで、日沖発と小見川道大が勝利を飾った。日本フェザー級の2強が揃って勝利したものの、山本“KID”徳郁や五味隆典、秋山成勲らはUFCの壁に阻まれている。その原因とは何か?

 MMAの世界最大にして唯一のメジャー団体・米国UFCで、ふたりの日本人ファイターが勝利を飾った。10/30・UFC137に初参戦した日沖発と、11/6・UFC138に5回目の登場となった小見川道大である。日本フェザー級の2強が揃って、勝利を収めた意味は大きい。ともに、相手はトップ戦線を張るファイターではなく、試合自体はとても完勝と言える内容でもないが、勝利の事実こそ重要だ。

UFC 137 日沖発 試合後インタビュー(UFC公式サイト)

   









 

 UFC 138 小見川道大 試合後インタビュー(UFC公式サイト)

   









 

日本が総合格闘技の中心だったのは、5年以上前の話。PRIDEはUFCに呑み込まれ、山本“KID”徳郁や五味隆典、秋山成勲をはじめとする日本のトップファイターたちは、UFCにチャレンジし、敗れている。

日本人ファイターだけではない。

ヴァンダレイ・シウバやアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、ミルコ・クロコップにマウリシオ・ショーグンら日本を主戦場としたPRIDE戦士たちもジリジリとトップ戦線から後退を余儀なくされた。

国内外のPRIDE戦士たちは、なぜUFCで勝てないのか?

この理由は至極なシンプルなもの。初期はリングと八角形の金網オクタゴン、踏みつけありとヒジありなど、PRIDEとUFCのルールの違いに選手たちは頭を悩ました。

ルールに慣れてきたが、UFCでは新たなファイターたちが続々と登場する。20代のショーグンはさておき、シウバもノゲイラもミルコも35歳オーバーのベテランである。激戦のダメージも蓄積している。ただ、単に遅すぎた挑戦にほかならない。UFCは続々とニューフェイスが誕生する。PRIDE、HERO'S、DREAMと団体名は変われどトップファイターの顔触れが変わらない日本では想像できないほどの新陳代謝が繰り返されている。

では、日本人ファイターはなぜ勝てないのか?

じつはこちらの方が深刻で、根深い問題である。

まず、MMAの取り組みで後手に回っている。
そもそも、日本人選手の試合に臨む準備で、米国勢と天と地ほどの意識の差がある。
8月のUFC133に参戦した秋山は、
スケジュールの都合でセコンド不在か、という非常事態に陥った。
本人は「自分ひとりで試合に臨まないといけないかもしれない。最悪オカンにセコンドに入ってもらうかも」とネタにしていたが、スポーツとしては考えられないことだ。
(結局、セコンドは見つかったが、その中には親友であり俳優の伊藤英明の姿が……。
日本でも桜庭和志のセコンドに阪神の下柳剛がつき、
秋山のセコンドには当時オリックスの清原和博がついた)。

米国では徹底的に対戦相手を分析する。
接近戦になるとフック系のパンチが多く、ガードががら空きになるとか、
距離を測るためにローキックを出すため、蹴り際はタックルに入りやすいとか、
構えをスイッチした瞬間にジャブを出してくるなど、
まさに微に入り細に穿つ分析のもと、対戦相手に勝つためのトレーニングを徹底するのだ。

日本人ファイターの現状は、ミドル級王座に挑戦した岡見勇信など、一部の選手を除き、サークル乗りと言える。

トレーニング環境もまた然り。

桜庭や五味、山本KIDなど、自らジムを持つトップファイターが多い。米国でも自前のトレーニング施設を有す選手はいるが、中身は似て非なるものだ。海外のトップ選手はレスリング、ボクシング、柔術、フィジカルなど各トレーナーがチームを組んで、ひとつの目標のもとトレーニングを続ける。

日本はと言うと、ボクシングはボクシング、レスリングはレスリングとトレーニングは分業化したまま。もっと言えば、自分のジムで下の選手たちを相手に自分の得意な練習ばかり繰り返す選手も少なくない。また、ジム経営が負担になっているのも否めない。五味にインタビューした際、「いちファイターとしてジム経営はマイナスでしかない」と断言していた。

トレーニング環境にトレーニングを支えるスタッフのレベルなど、
日本人ファイターはオクタゴンに上がる前に後塵を拝しているのだ。
(もちろん、ホームタウンデシジョンの判定もある。
ボクシングを見ても11/4・WBC世界スーパーフライ級タイトルに挑んだ名城信男が判定で破れ、敵地での世界挑戦は33連敗となった)。

環境面を含め、プロフェッショナルと言えるファイターを考えると、魔裟斗の名前が浮かんでくる。フィジカルトレーナー、ボクシングトレーナー、ムエタイトレーナーが喧々諤々の議論を経て、ひとつの方針のもと、魔裟斗をリングに上げていた。

アメリカでは5分3ラウンドはもちろん、チャンピオンシップを睨み5分5ラウンドを動き回るフィジカルのもと、ポイントゲームでも勝ち切るプランが徹底されている。「一発あたれば」「グラウンドにもっていけば」と語る日本人選手とは根本的な差がある。だからこそ、日沖、小見川が手にした勝利は大きいのだ。勝たなければUFCでの次のファイトはない。継続参戦しなければUFCトップ選手の勝つ理由は肌で感じることは出来ないのだから。

あおやま・おりま 1994年の中部支局入りから、ぴあひと筋の編集人生。その大半はスポーツを担当する。元旦のサッカー天皇杯決勝から大晦日の格闘技まで、「365日いつ何時いかなる現場へも行く」が信条だったが、ここ最近は「現場はぼちぼち」。趣味は読書とスーパー銭湯通いと深酒。映画のマイベストはスカーフェイス、小説のマイベストはプリズンホテルと嗜好はかなり偏っている。

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