横山幸雄  撮影:吉田タカユキ 横山幸雄  撮影:吉田タカユキ

デビュー25周年を迎えた、ピアニストの横山幸雄。節目の年でもそうでなくても、普通では考えられないような重量級プログラムの演奏会を涼しい顔でこなす彼だが、特別な年だからこそできる企画については、「いつも通り、強い意気込みとともに臨みます!」と話す。

横山幸雄 コンサート情報

サントリーホールで行われる記念リサイタルでは、長年のレパートリーから初披露の作品まで、横山のピアニスト人生にさまざまな形で関わる楽曲を取り上げる。「25年で一番変わったことは何かと考えました。学生として音楽を勉強していた頃は、昔から聴いてきた巨匠のレコードや先生の言葉が少なからず表現に影響を与えていましたが、歳を重ね、そこから自由になって自分の表現を追求できるようになった。それが最大の変化です」

そこで今回は、自由な音楽性を最も生かすことができる幻想曲や即興曲を中心に前半のプログラムを組んだ。「昔の作曲家たちは即興演奏が得意で、これがもし採譜されていたら幻想曲や即興曲になっていたでしょう。そこで、モーツァルト、シューマン、シューベルト、ショパンの幻想曲や即興曲に関連する作品を集めました。なかでもシューマンの幻想曲は初めてステージで弾きます」

加えて、ずっと自身の傍にあった楽曲も取り上げる。「幻想即興曲やノクターン≪遺作≫、アンダンテスピアナートと華麗なるポロネーズ、バラード第1番などショパン若き日の作品は、僕が長く弾き続けてきたレパートリー。一方リストからは、彼の即興性が投影されたラプソディのジャンルから、スペイン狂詩曲を。これは約15年ぶりに取り組む作品です」

横山の輝かしい音で聴けば間違いなく魅力的なものになりそうな、名曲揃いのプログラム。聴衆がそれぞれ理想の表現を思い描いているかもしれない“名曲”を演奏するにあたって、気負いのようなものはないのだろうか。

「それは特にありませんね。まず、名曲はそれ自体が語ってくれます。いずれにしても、どんな曲でも結局は自分の理想に従って弾くしかありませんから、誰かの考えに合わなくても仕方ないと思うしかありません。無理にでも自信を持つことができなくては、ステージに立つことなどできませんよ。どこか楽観的なところがある人間でないと、演奏家としてやっていくのは難しいでしょうね」

常に確信に満ちた表現をする横山幸雄らしい、精神の強さがにじむ答え。25年間第一線を走り続ける彼が辿り着いた、自由と確信の境地を聴くリサイタルとなりそうだ。

25周年記念公演は2017年1月21日(土)に東京・サントリーホール 大ホールで開催。チケット発売中。

取材・文:高坂はる香(音楽ライター)

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