ゴール間近となり、スパートの開始です。目指すべきゴール地点より120m手前でテレビ中継車が右折。これが寺田さんの“きっかけ”となりました。

スピードをグンッと上げた寺田さん。狙い通りのスパートが決まり、周囲を引き離したかのように、まわりに気配を感じなくなりました。

……が、しかし、それは振り切ったのではなく、道を間違ったから。

なんと、寺田さんは中継車を追ってコースを間違えてしまったのです。

『あのときは、真面目に終わったと思いましたよ。』と、あとでふり返った寺田さんは、懸命に他の3人に追いつこうとしたが、その間にも『下見だけじゃわかんないよ、中継車だって曲がったよ』と、どこに怒りをぶつけていいのやら、必至に走った

出典(箱根駅伝 勝利の名言 監督と選手34人、50の言葉)

コースを間違えた寺田さん。順位は、当然11位に後退。その差は30mもついてしまいました。必至になって再度、スパートをしかけます。

そんな寺田さんにとって幸運が2つありました。一つは、目の前を走る10位の城西大の選手が疲れていたこと。そして、もう一つは、追い抜くには十分な距離が残されていたこと。

走って、走って、走って、城西大をとらえた寺田さん。なんとかそのままゴールに流れ込み、無事、シード権を獲得したのです。漏らした言葉は、「危ねえ」。道を間違えながらも、見事に挽回するとは、なかなか逞しい1年生ランナーですね。

誰もが想像していなかった結末を迎えた2011年のシード権争い。この間違いが生じた交差点は、いつしか「寺田交差点」と呼ばれるようになりました。

こういった“まさか”が起こるのが、箱根駅伝の魅力なのかもしれませんね。さて、今回はどのようなドラマが生まれるのでしょうか。今から楽しみでなりません。