松平茂照を演じる草刈正雄

 昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」で、主人公・真田信繁の父・昌幸を豪快に演じて好評を博した草刈正雄が、幕末の江戸を舞台にしたプレミアムよるドラマ「幕末グルメ ブシメシ!」に出演する。勤番で江戸にやってきた酒田伴四郎(瀬戸康史)が、藩主の松平茂照(草刈)に料理を振る舞うことになるが…。殿さまでありながら、時折“謎の中間”として町に繰り出す茂照を演じる草刈が、役に対する思いや、娘の麻有との共演について率直に語った。

-今回の役どころをご自身ではどう捉えていますか。

 1、2話ではまだ出てきませんが、実は藩の中に殿と敵対するような家臣がいるんです。そんな藩のまとまりのなさを嘆いている殿には、「何かきっかけがほしい」と町に出てしまうようなやんちゃな部分があるのですが、そこで瀬戸くん演じる青年と知り合って、話が転がっていく。でも基本的にはしっかりとした殿だと思います。

-今回は“殿さま然”とした殿さまかと思えば、“謎の中間”も演じていて、「その二面性が楽しい」とおっしゃっていますね。

 あれは時代劇の醍醐味。殿さまと下町のお兄ちゃんの“一人二役”というのは昔からの定番なんです(笑)。昔は正月にオールスター勢ぞろいでそういう映画を作っていて、僕は子どもながらにそういう物語にすごく憧れていました。今回は「これを自分がやれるんだ!」と思いまして、すごく楽しみにしていました。

-実際に演じてみていかがですか。

 僕は役作りというのはあまりしません。衣装の力が大きいです。役者というのは、気持ち悪いもので、中間の格好をするとなんとなく中間になっちゃうし、殿さまの格好をすると、フワ~ッと殿さまの気分になる。あれって不思議ですよ。僕の場合はそこから(役を)拾うことが多いです。昌幸の時もそうだった。扮装をした時に、「これだ!昌幸は」という直感を頂きました。

-今回の殿さまも、「真田丸」で演じた昌幸同様に、ちゃめっ気のある役どころですね。

 そういった場面は、これからも多々出てきます。その辺も楽しんでやっています(笑)。

-瀬戸さんとのコンビネーションはいかがですか。

 とてもいいですよ。あの人のひょうひょうとしたところが好きです。後半の撮影も楽しみです。

-昨年は「真田丸」での当たり役もあり、「役者人生の中で最高の1年でした」とおっしゃっていましたが、改めて心境をお聞かせください。

 本当に(最高だったと)実感しています。僕は40年以上役者をしていますが、本当に最高の1年でした。素晴らしい役を頂いた。三谷(幸喜)さんの脚本には役者さんへの愛が感じられます。そういうカンパニーで仕事できたことは本当に幸せです。

-今回はどんな心境で挑まれますか。

 おかげさまでその後もいろいろお話を頂いたのですが、その中でも特にこれが面白いと、ビビッと来たので、直感で「これをやる」と決めました。

-ロケ現場となっている日光は、とても寒いと聞きしましたが。

 寒さが一番の敵です。でも、温泉がある宿舎なんですよ。どんなに寒くても、終わったら“あの風呂に飛び込むぞ”っていう楽しみがある(笑)。寒ければ寒いほど、後の楽しみになります。瀬戸くんとは一緒に風呂にも入りました。

-次女の麻有さんも鶏鍋「きじや」の店主の娘・お羽として出演しています。4度目になりますが、共演には慣れましたか。

 最初のうちは、家族と一緒に芝居をやるのはちょっと抵抗がありましたけど、今は麻有もそこそこやりますしね…。「お~っ!?」と思いながら見ています。本人も町娘なんて初めての役で楽しんでやっています。

-現場で直接アドバイスをされたりすることは?

 それを言うと怒られるので、何も言わないです(笑)。

-4話ではお羽と田中圭さん演じる伴四郎の同僚・五郎右衛門が、“いい関係”になりますが、お父さん目線としてはいかがですか。

 そのシーンを撮るのは明日なんですが、どういう芝居をするんだろうと今から楽しみです。ドキドキするんだろうけど、何も言わないでおこうと思って。言うと、ムッとするから(笑)。

-「ブシメシ」にちなみ、草刈さん自身が、ここぞという時に食べると元気になれる定番の食事を教えてください。

 僕はすぐ成り切っちゃうから、風邪を引いたりしたら必ずおかゆを食べます。塩でちょっと味付けされていて、後は昆布とか、明太子をちょっと入れて食べるのが大好き。カミさんに作ってもらったおかゆを食べていると、「あ~、病気になったんだな~」って思います(笑)。