藤谷:そして、他のコミカルな要素のあるV系、たとえばカメレオJin-Machineえんそくなどのバンドに触れた人も少なからずいたと思うんですよね。

ゴールデンボンバーのブレイク前だとたしかJin-Machineは池袋手刀や神楽坂エクスプロージョンの規模でしたし、えんそくはO-WESTワンマンだったかな。どちらのパターンも「恩恵」というよりは、もともと実力のあった人たちが注目を浴びる「きっかけ」になったという形だとは思うんですけど。

【カメレオの2016年】
1月にミニアルバム『KAMENICATION!』、8月にシングル『運命開華ディスコ』をリリース。イベント出演はVJSからプロレス団体のDDTフェスまで振り幅の広い活動を展開。

【えんそくの2016年】
1月に新宿ステーションスクエアにてゲリラライブを敢行。直前までバンド名が明かされなかったため、さまざまな憶測を呼んだ。5月にシングル『アリス・エクス・マキナ』、11月にシングル『12モンスターズ』をリリース。あとはウレぴあ総研記事のバックナンバーを見てください。

【Jin-Machineの2016年】
1月に『NEVER SAY NEVER』リリース、2月に赤坂ブリッツワンマン公演を行い、8月にはシングル『†夏☆大好き!ヴィジュアル系†』をリリース。

高崎:最近よくある、むやみやたらな無料イベントの費用対効果にはいささか疑問を抱きますが、えんそくのアルタ前ゲリラライブなんかは、話題の作り方も良かった好例だと思います。

藤谷:ちなみに私自身はメチャクチャ「恩恵」受けているんです。それ以前は一般メディアでV系の企画をあげても「いまさら?」みたいな空気だったのが、金爆以降は「ネクストブレイク」をメディアが求めていた部分もあって、企画を通しやすかったんですよね。

とはいえ、V系の中で明確なゴールデンボンバーのネクスト、フォロワーって頭角を表してないんですよね。Jin-Machineやえんそくにしたって、金爆の影響を受けて始めたのではなく、元からいたバンドじゃないですか。フォロワーがいないという意味では氣志團に近いのかもしれない。で、今年ついにゴールデンボンバーが紅白落選したわけで。

高崎:PERFECT HUMANと同じ枠だったんですかね(笑)。

藤谷:もちろん、これはゴールデンボンバーがオワコンになったというわけではなく、実際ニコニコ動画での「裏紅白」動画は落選がなければ実現しなかったですし。

今年のツアーも横浜アリーナの初日がすこし空席が目立ってたのですが、その公演の最後にスクリーンに出した「”ジャスティンボンバー”のツイート画像」が拡散していて、次の日は満員になってました。やっぱりあのバンドは色んな意味で面白いんですよ。

【ゴールデンボンバーの2016年】
4月にシングル『水商売をやめてくれないか』、11月にシングル『おどるポンポコリン』をリリース。また、VJS、氣志團万博、SUMMER SONIC等様々なフェスにも出演し、12月に”フェスで盛り上がる曲”をコンセプトにした『フェスベスト』をリリース。

EXILE TRIBE総出演の映画・ドラマシリーズ『HiGH&LOW』に”ホワイトラスカルズ”のメンバーとして出演。個々のバラエティ番組出演なども続くも今年ついに紅白歌合戦5年連続出演にならず。しかしながら「裏紅白歌合戦」をニコニコ動画で配信するなど、転んでもただでは起きない精神。

V系の客層は変化してる?

高崎:いまヴィジュアル系のファンの消費スタンスが二極化してる気がするんです。主要なバンドのアパレルブランド作ったりして、客単価を上げようという流れに全力投資をしている層と、ゆるくライトに消費している層。

KEYTALKも好きだけどV系のマイナーなバンドにも行く、V系ジャニヲタ二足のわらじ、スマホのソシャゲに課金しながらチェキにも課金みたいな。

藤谷:一本槍ではなくて、並行してる層が増えているのでしょうか。

高崎:昔からある話かもしれませんが、2016年はそれをひしひしと感じる年でした。

私、都内のライブハウスでも働いてるんですけど、仕事中にファンの子の会話が聞こえてきたりするんですね。「あのバンド”おもしろい”」っていう子の話がちょくちょく聞こえてきたりして、興味深い価値観だと感じました。

今V系の若手の中では0.1gの誤算のような、親しみやすくてノリの良いバンドが人気じゃないですか。邦ロックと兼業してる人たちも増えていることと繋がってくるんですけど。

【0.1gの誤算の2016年】
2015年結成の新鋭バンド。5月にシングル『有害メンへラドール』、8月にシングル『必殺!からくり七変化!』、11月にシングル『メガ誤算。』をリリース。公式YouTubeチャンネルにてYouTuberのようなバラエティ動画も公開している

藤谷:「ノレるかノレないか」の比重が高くなっているみたいな話は、ロックフェスなどでもいわれる話ですね。