投げかけられるテーマの違い

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物語のテーマについても、違いがあります。

アニメーション版ではクロパンが「誰がモンスターで誰が心ある人間か」と問い、カジモドとフロローの対比が語られていました。

それに対し、ミュージカル版では「人間と怪物、どこに違いがあるのだろう」と、とある人物が歌います。

これは一見微妙な差異ながらも、アニメーション版に比べてテーマがより深く掘り下げられているのです。

そして、これを歌う人物が誰か、またその際になされる”人間”と”怪物”を表す視覚的な演出が重要な意味を持ち、物語の核となる印象深いシーンとなっています。

人間と怪物、その差は何か?

どう線引きがなされるのか?

アニメーション版にはないフロローの善良な側面や、暴徒と化す民衆は一体どちらに振り分けられるのか?

あなた自身は、あなたの周りにいる人は?

と、いくつもの疑問が頭をぐるぐると駆け巡る……そんなテーマが投げかけられます。

明確な答えがなく、観客の考えに委ねる点もアニメーション版とは異なり、きっと鑑賞後に思索にふけってしまうことでしょう。

全身で感じる荘厳な音楽

『美女と野獣』、『リトルマーメイド』、『アラジン』の音楽を手掛けたアラン・メンケン作曲のアニメーション版の音楽がほぼ全て使用されています。

カジモドの「陽ざしの中へ(Out There)」、フロローの「地獄の炎(Hellfire)」など、主要な登場人物にそれぞれの見せ場があり、映画にまったく劣らない大迫力の生歌を聴くことができます。

アニメーション版の音楽を生で体感できる素晴らしい完成度です。

その中でも、特に圧倒されたのは聖歌隊の存在。

男女8名ずつ、計16名の聖歌隊が全編を通して登場し、歌に深い響きを与えています。

印象深いプロローグ曲「ノートルダムの鐘(The Bells of Notre Dame)」で歌われるラテン語の教会音楽は荘厳な雰囲気を醸し、観客を一気に1482年のパリへといざないます。

音の厚みと響きを全身で感じることができるのは、ミュージカルならではの体験です。

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