放送は毎週土曜、午後9時から(再放送は翌週土曜、午後4時30分から

 NHKの大河ファンタジー新シリーズ「精霊の守り人 悲しき破壊神」が1月21日から放送されている。ロタ国王ヨーサムの弟・イーハン役で登場するディーン・フジオカが、視聴者目線でドラマへの興味や感想、日本での本格俳優デビュー前に海外で「厳しく言われて教わった」という得意のアクションへの並々ならぬ思いを語った。

 このドラマは世界中で愛される日本発のファンタジー大作「精霊の守り人」シリーズを4K実写ドラマとして3年間にわたって放送。前作(2016年3-4月に放送)から4年後を描く新しいシリーズでは、綾瀬はるか演じるお尋ね者となった主人公の女用心棒バルサと新ヨゴ国の皇太子になったチャグムの別れ別れとなった2人のそれぞれの冒険が再び始まる。

──出演が決まり、脚本を読んだ際の感想からお願いします。

 最初に1話の脚本をいただいて、同じようなタイミングで前シリーズの映像を見せてもらいました。アクションが派手に強調されている物語で、すごく楽しめる作品だと思いました。僕はアクションが大好きだからドキドキワクワクで、馬にも乗れるし剣にも触れるしアクションが楽しみだと思っていたら、新しいシリーズには意外とアクションが少なかった。残念だと周りに相談したら、皆さんすごく優しい方ばかりで「それならやってみようよ」と(笑)。刀を使ったアクションをやらせてもらいました。

──ディーンさん自身の希望が通り、夢がかなった形になるのでしょうか。

 本当はもっともっとやりたかったくらいですけど(笑)。少しでも自分が好きなものをやらせていただけるとなると、役に対する思いも役作りの過程で育んでいけるわけですが、そこにまたひとつ違うレイヤーが加わって、この役と寄り添っていけるなとうれしく思っています。

──若いころにアスラの母・トリーシア(壇蜜)と恋に落ちたことがあり、タルの民を抑圧から解放したいという考えが南部の領主の反発を招く…というイーハンですが、ディーンさんは彼をどのような男だと捉えていますか。

 彼はすごく優しい人ですね。人種差別や民族差別が激しく存在する設定だったので、そういった制度というか習慣にとらわれず人の内面を見て接することができるピュアなハートを持っている人だと思いました。イーハンの部分だけ見ると、意志や自信を強く持っていて自分の信じる道と違うものと戦っていく。変化を作っていこうとするリーダーになっていく成長物語ですね。迷いがあるときって口調やたたずまいに出ると思うので、前半と後半では声のトーンや間の取り方をだいぶ変えました。あとは前半は弱さを隠さず見せていって、後半では一つひとつのことに迷いがない感じで演じました。

──剣を使ったアクションを実際にやってみていかがでしたか。

 剣術のシーンは、良い意味で物足りないと感じました。とにかくもっとやりたかったな、という思いがあります。すごくいろいろなものを身に着けていたので、絡み合って動けなくなってしまったり、頭のものが落ちてきてしまったのがもどかしかった。芝居とアクションが別々のものにならず、一つの感情表現としてやらせてもらえたことには達成感がありました。ずっとそういうことを厳しく言われ教わって育ってきたので、すごくうれしかった。そのときいろいろ教わったことを実際のお仕事として違う国でも発揮できたので。

──撮影でもっとも苦労したのはどこでしたか。

 下田・南伊豆で撮ったときは、プロセスが撮影というよりけっこう本気の登山でした。トイレも山から降りないとないようなところで、道もないところに臨時で階段を作ったような…。あれはしんどかったですね。シーンとしてはトリーシアとの初めての出会い。引き裂かれてしまうまでをその日に全部撮って、いい意味で作品全体のトーンは違う、プレゼントになるようなシーンが撮れていると思います。より初恋チックというかラブストーリー的なアクセントですね。だからこそ引き裂かれたときの怨念が反動として強烈なものになって、愛と憎しみのシーンになっていると思いました。

──トリーシア役の壇蜜さんとのシーンは画を見るととても驚くものでした。

 祭儀場のシーンは初日に撮りました。壇蜜さんとお会いしたのはこのときが初めてで、壇蜜さんに刺さっている槍の先端をつついて「これ痛いですか?」などと話して仲良くなりました(笑)。もう本当に突き刺さっていましたから。その前に壇蜜さんにごあいさつさせてもらったのですが、撮影に入ったらいきなり刺さって動けなくなっていて…。壇蜜さんも「私悲しくなってきた」というようなことを言っていて、「なんていう遊びをしているんですか」と突っ込まれました(笑)。

──前のシリーズでも綾瀬はるかさんはバルサとして高度なアクションを求められ頑張っていましたが、ディーンさんの目から綾瀬さんのアクションを見てどう感じましたか。

 タフだなと思いました。この作品の撮影って長時間じゃないですか。それが連日続く中で集中力を途切れさせずに役でいられて、アクションの流れもリズムキープできるのは一つの技術だと思います。実際にアクションをやっている姿を目の当たりにして、すごく努力家なんだろうなと勝手に思いました。今後、一緒にアクションをやる機会がストーリー上であればやってみたいけど、できればアクション専門のスタッフとがいいですね。役者は特に、万が一のことがあると大変なので、個人的な希望を言えば僕はスタントマンの方々と激しくやりあう方が気が楽でいいかなと思います(笑)。

<プロフィール>
ディーン・フジオカ(でぃーん・ふじおか)
福島県生まれ。高校卒業後アメリカ、シアトルの大学へ留学。大学卒業後、香港へ渡りモデルとしてデビュー、映画の主演にも抜擢される。その後、台湾に拠点を移しドラマ、映画、TVCMに出演するなど、アジアを中心に語学力と多方面の才能を活かしボーダレスに活躍する。日本ではNHK『あさが来た』(2016)などに出演し注目され、自身が作詞作曲しプロデュースした初のアルバム『Cycle』を同年4月に発売、東京と大阪で年末ライブを行い、ミュージシャンとしても積極的に活動中。