​2月22日にサービスを開始する「majica Premium Now」

ディスカウントストア大手のドンキホーテホールディングスが、2月6日に最短58分以内の配達サービス「majica Premium Now」を発表した。Amazon.co.jpやヨドバシカメラなど、手強いライバルがひしめく配送サービスのスピード勝負。後発で土俵に上がるドン・キホーテに勝算はあるのか。サービスを統括する営業支援室の荒井辰也ゼネラルマネージャーに戦略を聞いた。

「majica」会員が順調に増加、約3年で400万人目前

そもそも「majica(マジカ)」とは、店舗のレジか専用のWebサイトで現金あるいはクレジットカードでチャージして利用できる、ドン・キホーテグループのオリジナル電子マネーだ。会員になると、チャージ金額の1%ポイント還元や、1000円以上の会計で1~9円の端数割引など、さまざまな特典を受けることができる。

14年3月に開始した「majica」は、着実に成長し、現在の会員数は400万人に迫る。「majica Premium」は、この会員に向けてさらなるメリットを提供する狙いがある。16年10月にスタートした第一弾「majica Premium Global」は訪日外国人を対象にしたサービスだったが、第二弾「majica Premium Now」は、国内会員が対象になる。

「Amazon Prime Now」を意識した配送時間と価格設定

まず、サービス概要で目を引くのが「最短58分以内」という数字だ。荒井ゼネラルマネージャーはその理由を「競合より少しでも早く届けるという決意です」と語る。現在、スピード配送の代名詞になっている「Amazon Prime Now」の配送は「最短1時間以内」。業界の雄に対しても一歩も引かないという姿勢が垣間見えた。

意識するのは配送時間だけではない。「Amazon Prime Now」は1時間配送便に890円の追加料金がかかるが、「majica Premium Now」は750円。最低購入金額も「Amazon Prime Now」が2500円以上のところ、「majica Premium Now」は2000円以上だ。

サービス開始時に用意する対象商品数は、食品、飲料、酒類、日用消耗品などを中心に約2500アイテム。まだ品揃えでは先行するサービスに分があるが、現時点でも既存サービスに勝っているポイントはある。ディスカウントストアの強みでもある価格だ。

「店舗価格よりはやや上回るものもありますが、EC対比では安い」(荒井ゼネラルマネージャー)。同質のスピード配送であれば、1円でも安くと考える利用者は少なくないはずで、商機は十分にあると考えている。

配達に配送業者は利用しない。自社の従業員が店舗から顧客宅まで商品を直接届ける。具体的にどのようにアプローチするかは運営しながら検討するとのことだが、エンドでの顧客接点の強化を想定している。

拠点数の多さで急拡大を狙う

最大の差別化ポイントとして荒井ゼネラルマネージャーが挙げたのが、拠点の数だ。17年2月6日発表の第2四半期連結業績説明資料によると、すべての業態を含めた店舗数は354店。専用の倉庫は用意せず、既存の店舗を有効活用し、サービスの拡大を目指す。今後の予定はまだ発表していないが、関東・関西を中心に、インフラ整備がしやすい店舗から順次展開していくという。

圧縮陳列の店舗から指定の商品をピックアップする作業は、専用倉庫をもつ競合と比較して時間がかかるという課題はある。こうした事情を考慮して、58分以内配達は店舗から半径約3km、2時間毎配達は店舗から半径約5kmと対応エリアの範囲はやや狭い。しかし、今後も店舗数が増えれば、カバーできる範囲は広がる。

サービスの稼働は2月22日から。MEGAドン・キホーテ大森山王店でスタートする。効率的に宅配するために、トラックのほか小回りの効くバイクや電動自転車も準備する。全国に店舗というインフラをもつドン・キホーテは、スピード配達で先行するプレイヤーの戦略に、少なからず影響を与えそうだ。(BCN・大蔵 大輔)