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「中村屋!」「成田屋!」

歌舞伎の上演中に飛んでくるこの掛け声、誰が発しているのだろう?と思ったことはないでしょうか。

絶妙なタイミングで声をかけているのは、“大向う”(おおむこう)と呼ばれる観客で、歌舞伎の観かたを知り尽くした、言ってみればプロの盛り上げ役です。

大向うの会、「弥生会」のメンバーで、故・十八代目中村勘三郎に「一番信頼出来る大向う」と言わしめた、堀越一寿さんに初心者が歌舞伎を楽しむコツについてお聞きしました。

初心者が歌舞伎を楽しむコツ

Q1.「歌舞伎は難しそう」というイメージ。初心者でも理解しやすいコツとは?

歌舞伎は庶民の中から生まれてきた芸能ですから、それほど難しく考える必要はありません。四百年の歴史があり、今は江戸時代でもないのでわかりづらい部分はあるでしょうけれど、そこは大した問題ではありません。

コツは二つです。

一つは「全てを言葉(台詞)から受け取ろうとしないこと」

私たちは、言葉以外にもたくさんのコミュニケーション手段を持っています。例えば、表情、身ぶり手ぶり、声の大きさや口調など。

そうした情報から、相手の気持ちや状況をイメージできますよね。また、その人が着ているもの、住んでいる場所を見ることで、暮らしぶりや身分を推理することもできます。

二つ目は「理解しようとしないこと」です。実は、ここが大切です。

私たちには“想像力”という素晴らしいギフトが与えられています。そして舞台の上には役者さんの表情、声、身ぶり手ぶり、衣装、背景、大道具、小道具…情報があふれています。

これを「わかろう」とすると、頭が理屈っぽい考えに支配されてしまいます。せっかくの想像力は閉ざされてしまい、わからないところにばかり意識が向き始めてしまう。

そうではなく、目の前の人物が何を感じているのか、喜んでいるのか、怒っているのか、悲しんでいるのか…それを「感じる」ことが大切なのです。

言葉や文化が違っても、人の心・喜怒哀楽という感情は、同じです。言葉がわからない異国の人ですら、時に心が通じ合うのは、相手に共感しようという思いがあるからですよね。

「理解しなければいけない」という思いは捨ててしまってください。

「わかる」より「感じる」、これが一番のコツだと私は信じています。

 

Q2.初心者が歌舞伎鑑賞を楽しむにはどうしたらよいでしょう?

ズバリ「ネタバレ」です。実は歌舞伎は演劇ではありますが、楽しみ方は音楽ライブに近いのです。

たとえば、星野源さんのコンサートに行くとしたらシングルやアルバムを聴いて「予習」しますよね。全曲知らない曲ばかりだったらなかなか乗れないし、かなりガッカリしませんか?

また、『ワンピース』のアニメを「原作で読んで知っているから見ない」なんて子供はいませんよね。むしろ原作を知っているから「あの場面はどうなっているんだろう」とワクワクしているくらいです。

歌舞伎も同様です。事前にあらすじを知っておくことで、物語をより深く味わえるようになります。

そして役者さんの演じ方、表情や声、衣装の美しさ、長唄や清元などの音楽、効果音など、隅々まで感じられるようになります。何も知らないと「物語の筋を追いかけるだけで精一杯」なんてことになりかねませんし、それではもったいないです。

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