『ミス・サイゴン』のキャスト 左から原田優一、知念里奈、市村正親、笹本玲奈、山崎育三郎 『ミス・サイゴン』のキャスト 左から原田優一、知念里奈、市村正親、笹本玲奈、山崎育三郎

ミュージカル『ミス・サイゴン』のプレビュー公演が7月1日に東京・めぐろパーシモンホールにて開幕、2日には同会場で出演者5人よる記者会見が行われた。

『ミス・サイゴン』公演情報

1989年にロンドン、1991年にNYで幕を開け、1992年の日本初演時には1年半にわたるロングランを記録した。すでに定評のある作品だが、今回日本で初めて披露される新演出バージョンは、キャストにとっても新鮮に感じられたよう。20年前から“エンジニア”役を演じ続け、「700回くらいやって体にしみついているので、音楽が鳴っただけで役になれる」という市村正親は、「ステージの傾斜がなくなったり、リモコンで動いていた舞台装置を人が動かすようになったり。左右だけでなく、上下も活かした演出になっている。よりリアルで、よりドラマ性が強い。新鮮な気持ちで演じることができます」とその印象を話す。また、前日のプレビュー公演初日ついては「日本初演と同じような興奮がお客様にあって、カーテンコールがなかなか収まらなかった」と振り返った。

日替りでキム役を演じる笹本玲奈と知念里奈は、「お芝居の要素が強くなった」(笹本)、「どのシーンも感情があふれる生々しいものになっていると思う」(知念)とコメント。クリス役の山崎育三郎と原田優一も、「稽古中は“もっともっと、キスキスキスキス!”と演出家に言われました。映画だと思えと。キムとふたりでいるところをカメラにのぞかれているような意識で演じろと。歌も、ふたり向き合ったままで、お客さんのほうに歌いかけたりしないんです」(山崎)、「昨日の公演では、お客さんが息を呑むのまで感じられた。僕らにとっても刺激的な初日になりました」(原田)と、口を揃えて新演出のリアリティに言及した。

ベトナム戦争を背景にしているが、戦争がテーマではない。伝えたいのは、“究極の愛”だ。あらためて見どころについて問われた市村は、「曲がいい。ドラマがいい。舞台転換がいい。俳優がいい。オケがいい。照明もいい。皆いいんです。『ミス・サイゴン』全体を楽しんでほしい」と作品の総合力をアピールした。

舞台装置のスケールが大きいことから、これまで日本国内では、東京・帝国劇場、福岡・博多座の2か所でしか上演がかなわなかったが、新演出バージョンは劇場の大きさや設備の制約を受けないため、全国各地に出向くことが可能になった。それにより今回は、東京のほか、広島、名古屋、甲府、厚木、仙台、北九州、浜松、大阪、熊本、松本、盛岡の11都市での上演が実現する。足かけ7か月にわたる長丁場になるが、市村は「それぞれの地元の方の“待ってたぞ”という声に応えたい。喜んでいただける顔を間近に見られるのはうれしいです」と初の全国縦断公演への期待を語った。