制作発表会見より。(左から)ジャン=ルイ・グリンダ、ジャンパオロ・ビザンティ、オルガ・ペレチャッコ=マリオッティ、飯守泰次郎、アルトゥール・ルチンスキー、イスマエル・ジョルディ 制作発表会見より。(左から)ジャン=ルイ・グリンダ、ジャンパオロ・ビザンティ、オルガ・ペレチャッコ=マリオッティ、飯守泰次郎、アルトゥール・ルチンスキー、イスマエル・ジョルディ

この秋に開場20周年を控える新国立劇場で、新制作上演のドニゼッティ『ルチア』(3月14日初日)の制作発表会見が行なわれた。「久しぶりのベルカント・オペラ。キャスティングには相当力を入れた」と芸術監督の飯守泰次郎も意気込むように、指揮者、演出含め、充実布陣が整った注目公演だ。

新国立劇場オペラ『ルチア』チケット情報

『ルチア』は、19世紀前半に隆盛した、技巧的な歌唱法を駆使する「ベルカント・オペラ」の最高傑作。敵対する一族の当主エドガルドと愛し合うルチアは、兄エンリーコの策略によってその仲を引き裂かれ、別の男との政略結婚を強要される。その婚礼の夜、悲しみのあまり精神に異常をきたしたルチアは新郎を刺し殺し、自らも息絶える…。

最大の見どころは錯乱したルチアの歌う「狂乱の場」だ。十数分に及ぶ長丁場にコロラトゥーラの歌唱技術が最高度に散りばめられ、ルチア歌手の真価が問われる。

今回この難役を歌うのが、「ベルカントの新女王」の呼び声も高いオルガ・ペレチャッコ=マリオッティ。ペーザロのロッシーニ音楽祭をはじめベルカント・オペラで高い評価を得て、現在欧米の歌劇場で引っ張りだこ。スター街道をばく進中の美貌のソプラノだ。2010年にラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンで来日しているが、彼女の躍進が始まったのがちょうどその頃から。今や最も注目されるソプラノとして帰ってきた彼女の出演は、今シーズンの新国立劇場の目玉のひとつと言っていい。

「大好きな日本で、新しいルチアを作り上げることができて大変うれしい。劇場も完璧。初日にお会いしましょう!」と流暢なイタリア語で語った。圧倒的な「狂乱の場」にどうしても話題が集中しがちだが、オペラの最後に、物語を完結させる重要なアリアが与えられたエドガルド役のリリック・テノール、イスマエル・ジョルディ、憎まれ役としての強い存在感が必要なエンリーコ役のバリトン、アルトゥール・ルチンスキーも、同役を得意とする実力派。

オペラ通なら特に、「ベルカント・オペラの大使」を自認する指揮者ジャンパオロ・ビザンティのタクトにも注目。会見でも「ベルカント・オペラは往々にして表面的にしか理解されていない」と止まらない熱弁をふるった「ベルカント愛」が、その真の姿を引き出してくれるにちがいない。演出はモンテカルロ歌劇場総監督のジャン=ルイ・グリンダ。

新国立劇場オペラ『ルチア』は3月14日(火)・18日(土)・20日(月・祝)・23日(木)・26日(日)の5公演。

取材・文:宮本明