家電量販店のデジタル関連の売り場の中で、いま最も活気のあるのがSIMフリースマートフォンコーナーだ。当初のITリテラシーの高い層だけではなく、女性や初めてスマホを使う高齢者など、SIMフリーに関心をもつユーザー層は広がり、売り場の状況も大きく変化している。

現場のリアルな動向を探るため、今回は、いち早く店舗内にSIMフリーコーナーを設置し、黄色をモチーフにした「格安スマホコーナー」を展開しているビックカメラ、2015年11月に「ZenFone 5」を投入して以来、市場拡大をけん引してきたASUSの2社の対談を実施。ビックカメラで通信事業を統括する商品本部商品部モバイルグループ長 兼 営業本部営業部通信事業部の平賀直也事業部長と、商品流通を担当するASUS JAPANのコンシューマー事業部リテール営業1課の佐藤哲生アカウントマネージャーにお話をうかがい、製版双方の視点から、今後さらにSIMフリースマホ市場が成長するために何が必要か、語り合ってもらった。

14年11月がターニングポイント、「ZenFone 5」登場で市場が一変

―― 家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、SIMフリースマホは、16年12月に、初めてスマホ全体の販売台数2割を超えました。ビックカメラではかなり早い時期からSIMフリースマホに力を入れていますね。売り場での展開はいつ開始したのですか?

:当社では、オリジナルSIMカード「BIC SIM」を13年6月から販売し、14年3月に音声通話対応版を投入しました。音声通話対応の「BIC SIM」とSIMフリースマホをセット販売するにあたり、売場展開を14年4月に強化しました。それから徐々に市場が認知され始め、11月頃から急速に市場が動き始めました。ちょうどASUSの「ZenFone 5」が発売したタイミングですね。

―― 「ZenFone 5」はASUSにとっては、日本で初めて展開するスマートフォンでした。市場がほとんど形成されていないなかで、勝算はあると踏んでいたのですか?

:海外では一般的ですが、日本ではそもそも「SIMフリー」という言葉自体がほとんど知られていなかった。もちろん、リリース前はとても不安でしたよ。しかし、投入した11月に非常に好調に推移したことで、いけるぞと確信しました。

―― ユーザーは「格安」という言葉に反応したのでしょうか?

:とっかかりはそうかもしれません。しかし、ASUSとしては「格安」という意識は全くなく、日本市場でどんなSIMフリー端末は必要なのかをリサーチし、最初のモデル「ZenFone 5」を導入しました。日本用に完全カスタマイズし、最初からLTE対応モデルを導入するなど「格安で運用できる」だけではなく、端末として「ワンランク上の贅沢」の提供することを意識していました。SIMフリースマホ自体は世の中にすでにありましたが、上質な端末はほとんどありませんでした。お客様が反応を示したのは、品質・デザイン・コストパフォーマンスなどの要素が大きかったと分析しています。

:お客様も「大手キャリアが販売する端末と遜色ない」ということを理解して買っていただいていたと思いますよ。「ZenFone 5」が登場した月のビックカメラのSIMフリースマホの売上は、前月の300%以上でした。商品としての魅力がなければ、ここまで伸ばすことはできません。

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