エリアフ・インバル (C)K.Miura エリアフ・インバル (C)K.Miura

世界的に見てもきわめて積極的にマーラーを取り上げ続けている東京都交響楽団。その彼らの今シーズン唯一のマーラーが聴けるのが、桂冠指揮者エリアフ・インバル指揮の《大地の歌》だ(7月16日(日)・17日(月・祝)、東京芸術劇場にて)。

都響スペシャル のチケット情報

《大地の歌》はマーラー(1860-1911)が48歳の夏に作曲した交響曲。9番目の交響曲だが、ベートーヴェンやブルックナーらが交響曲第9番を書いたあとに死んだジンクスを怖れたマーラーが、あえて番号をつけなかったというエピソードが知られている(結局マーラーも次の交響曲を「第9番」として作曲したあと、未完の第10番を残して世を去ったのはジンクスゆえか)。自作の交響曲の多くに声楽を取り入れ、第8番では壮大なカンタータのような大伽藍を築き上げたマーラーは、ここでも、連作歌曲と交響曲を一体化した異色の交響曲を生み出した。テノール独唱とアルト独唱が交互に歌う全6楽章構成。ドイツ語訳の中国詩集『中国の笛』から採られた歌詞はしばしば、生のはかなさや厭世観を歌った内容だと表現されるが、インバルは言う。

「マーラーは自分の人生が終わりに近づいていることを察し、死を受け入れ、永遠に生き続ける来世を願い、この世での幸福、希望、苦労、愛、音楽、創造等、豊かで充実した人生を送れたことを神に感謝しているのです。ノスタルジア、悲しみ、人生との別れ、来世を意識していると考えます」

インバルと都響はすでに1994~96年と2012~14年の2回にわたって交響曲全曲ツィクルスを完遂し、日本のマーラー演奏史の金字塔とも言える大きな成果を示している。

「マーラーを演奏するに値し、彼の音楽が持つ宇宙をより深く理解するには、私たちは芸術家、人間として成長しなければなりません。都響と聴衆の皆さまは、2回のマーラー・ツィクルスをともに経験し、マーラーの芸術性の理解を高めました。私たちはマーラーのメッセージをより深く理解できると確信しています」(インバル)

演奏の成否を大きく左右する声楽陣も強力。ダニエル・キルヒは抒情的で美しい持ち声をベースに、さらにドラマティックなレパートリーも獲得しつつあるテノールで、《大地の歌》にはまさにうってつけ。そして現代を代表するマーラー歌いと言ってもいいアルトのアンナ・ラーション。マーラーを知り尽くした彼女の深く澄んだ声は、作曲家が作品に込めたさまざまな感情を、適切な形で探り当ててくれるに違いない。

文:宮本明

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