指揮 アラン・ギルバート (C)Rikimaru Hotta 指揮 アラン・ギルバート (C)Rikimaru Hotta

東京都交響楽団の4月の定期演奏会で、ジョン・アダムズの《シェへラザード.2》が日本初演となる。2015年3月26日、今回ソリストをつとめるリーラ・ジョセフォウィッツのヴァイオリン、アラン・ギルバート指揮のニューヨーク・フィルハーモニックで初演された作品だ。この新しい作品について、ギルバートに話を聞いた。

「ジョンの作品をずっと指揮しているので、彼の作品の進化を実地に体感しています。その変化のなかでも、《シェヘラザード.2》はかなり変ってきたところにあるように思えます。近年のジョンの作品はオペラから影響を受けており、本作には言葉こそついていないけれど、ドラマティックなストーリーはしっかり伝わってきます。主役はヴァイオリンですが、バック・ストーリーがあります。そして、ほかの作品よりロマンティックな仕上がりです。ジョンは年齢とともに、ハートでつくるようになってきている、とわたしはおもっているんですね。ニューヨーク初演はスタンディング・オヴェーションになって、とても好評でした。ヴァイオリニストは暗譜で弾き、目が離せませんでしたし。オーケストラもとても楽しんでいました。難しいけれど、満足感がある。偉大なものに接したというのがみんなのなかにあるんです。宝物をいただいたような、ね」

作曲者は、自作について述べるなか、『千一夜物語』のなかに描かれた女性と現在の状況とを重ねている。現在のアメリカ合衆国でイスラム=アラブ世界の物語について言及することも、そこには意識されているようにみえる。

「ジョンは政治的なホットなテーマをとりあげることを躊躇ったりはしません。ですが、わたしはそうしたことより、『千一夜物語』はある特定の文化から生まれてきたのは確かだけれど、もっとそれを超えるようなテーマがここにはある、と思っています」

オーケストラを存分にひびかせ、指揮者や演奏家にも演奏する喜びを、また聴くことの醍醐味を感じさせる作曲家との評価がある一方、ジョン・アダムズの音楽は日本であまり演奏されていない。

「ジョンの音楽はつねにレヴェルは高いけれど、ずいぶん変ってきました。変化しているけれど、その声はしっかり伝わってきます。交響曲的なフォルムや色彩感を大切にしているところは変りません。日本のオケはプログラムについては保守的な面があるけれど、ジョン・アダムズの音楽は弾きやすく聴きやすい、そして新鮮な音楽です。新しいけれどもみんなが理解できる言葉で書かれているのです」

東京都交響楽団による《シェへラザード.2》は4月17日(月)東京文化会館 大ホール、4月18日(火)東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアルにて。

文/小沼 純一(音楽・文芸批評/早稲田大学教授)

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