5人のリレーに感じる、「働く人々」への敬意

木曜日が吾郎さんで、金曜日が木村拓哉さんで、土曜日が中居正広さんで、日曜日が草彅剛さんと香取慎吾さんであるということそれ自体が、彼らの「働く人々」への敬意なのだと、あらためて思う。

わたしたちの週末は、吾郎さんのラジオで始まり、草彅さんと慎吾さんのラジオで終わる。週末に別れを告げたなら、また一週間がスタートする。それはかなしむべきことではないし、怒るようなことでもない。わたしたちは「働く人々」なのだから、真新しい月曜日に一歩、足を踏みだせばそれでいいのだ。

ちょっぴり憂鬱でも、少し疲れていても、働いていれば、やがて木曜日がやってくる。その繰り返しが「働く人々」の日常だ。

時間のことをつい想ってしまったのは、木村さんがラジオで、歯の治療の話をしたからでもある。

木村さんはドラマ『プライド』の撮影中に負傷し、失ったままにしていた歯の空白部分を、昨年、治療したのだという。実に12年ぶりのことだった。ご存知のように『プライド』の共演相手、竹内結子さんと木村さんは先頃放映が終了した『A LIFE ~愛しい人~』で顔を合わせた。

たまたまのことだったそうだけど、そのたまたまのタイミングに、時の流れが持つ運命のようなものを感じる。

5人も、わたしたちも、これからも続く日常を生きていく

中居さんは昨年末に、2016年は「習っていないことが起きた年だった」とラジオで振り返ったが、この前の番組でも、WBCの公式サポーターの仕事には「教科書がない」とつぶやいた。たしかに昨年は特別で特殊な年だったかもしれない。だけど、自分自身のことをノンプロと称する中居さんの姿勢は、何も変わっていない。

思うに、日常を生きるということそれ自体がそういうことなのかもしれない。日常を生きる。それは簡単なことではない。これまで習ったことが通用しないことも起きるし、参照できる教科書がないことだってある。それでも、わたしたちは生きる。日常を生きる。これからも日常を生きる。

「ブルゾンちえみって知ってる?」「知らない」。慎吾さんは、草彅さんの答えを聞いて、やっぱり、というニュアンスを浮かべた。そのとき、ふたりのあいだに流れる空気も、何も変わっていなかった。日常は終わらない。そう思えた。

吾郎さんは、リスナーからのちょっといい話にうなづきながら、『君は君だよ』を流した。木村さんは、『A LIFE』タイトルバックに映るリンゴの話題を語り終えた後、『オレンジ』をかけた。草彅さんと慎吾さんは、ゆるゆるの空気のまま、『そっと きゅっと』を聴かせた。

これ以上、何にもいらない。だって、彼らは生きているのだから。

連載<SMAP is ALIVE―SMAPは生きている>更新中!

第1回:【SMAP】PVから見えてくる、“5人からの隠れたメッセージ”

第2回:俳優・木村拓哉、キャリア最良の演技!? ドラマ『A LIFE』で見せた“名シーン”

第3回:ハンパない!『嘘の戦争』の演技に見る「草彅剛にしかできないこと」

第4回:メンバー5人のラジオから受け取る、“変わらない日常”の尊さ

第5回:【中居正広】生放送でより輝く、MCを超えた魅力とは?『ミになる図書館』~『スマステ』を見て

第6回:SMAPは「無限の住人たち」である――映画『無限の住人』のラストが示すものとは

最終回:【SMAP】“珠玉の10曲”からいま受け取る、彼らが残したかったメッセージ

ライター/ノベライザー。「週刊金曜日」「UOMO」「T.」「シネマスクエア」などの雑誌、T-SITE、リアルサウンドなどのネット、日本映画の劇場用パンフレットなどに寄稿。楽天エンタメナビで週刊SMAP批評「Map of Smap」を3年5ヶ月にわたって連載。草彅剛主演作のノベライズ『嘘の戦争』(角川文庫)が3月10日に発売。