家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、日本で最も売れたスマートフォンは、2011年8月末の時点ではアップルの「iPhone 4」だった。その後継機種「iPhone 4S」も人気を集め、特に2011年10月14日の発売直後は、他の機種とはケタ違いの驚異的な売れ行きを記録した。「iPhone 4S」は、2012年に入っても売れ続け、6月17日には、ついに「iPhone 4」の累計販売台数を抜いた。とはいえ、iPhone 4/3GS/3Gからの機種変更も多いとみられ、発売から約8か月というスピードは、取り扱いキャリアが従来の1社から2社に増えた割には時間がかかったといえるかもしれない。

●「iPhone 4S」のキャリア別シェアは6:4でソフトバンクモバイルが優勢

ソフトバンクモバイルとKDDIの2社が販売する「iPhone 4S」のキャリア別販売台数シェアは、2012年6月30日までの累計で、ソフトバンクモバイルが60.1%、KDDI(au)が39.9%で、ほぼ6対4。しかし、「iPhone 4」と「iPhone 4S」のソフトバンクモバイル版の販売台数を比較すると、「iPhone 4」のほうが多く、「iPhone 4S」の発売を機にauに乗り換えたユーザーや、まだ機種変更せずに手持ちのiPhoneを使い続けているユーザーは少なくないようだ。

「iPhone 4S」の発売に合わせて「iPhone 4」に廉価版の8GBモデルを追加したソフトバンクモバイルは、iPhone 4S/4の2機種を併売していたが、今年5月あたりから「iPhone 4」の販売台数が減少し、6月にはほぼゼロになった。モデルチェンジが頻繁に行われる携帯電話ジャンルにあって、「iPhone 4」は2010年6月の発売から2年近くにわたって売れ続けた異例のロングセラーモデルになった。6月末の時点では、「iPhone 4S」と「iPhone 4」の累計販売台数の差は小さいが、事実上、量販店では「iPhone 4」の販売が終了しているので、差は広がっていくだろう。ただし、現行の「iPhone 4S」の販売台数が積み上がれば積み上がるほど、画面サイズの大型化、高速通信規格の「LTE」対応など、すでにさまざまな情報が飛び交っているiPhone次期モデルが超えなければならないハードルは高くなる。

●2012年6月の携帯電話ランキング、「iPhone 4S」が1位・2位に返り咲き

「BCNランキング」によると、2012年6月のスマートフォンの販売台数は前年同月比141.8%と、ここ数か月の間では低い水準だが前年を上回った。対して、従来型の携帯電話は前年同月比58.7%にとどまり、前年割れの状況が続いている。

SIMフリー端末を含む携帯電話全体の6月の販売台数1位は、2011年11月以来、6か月ぶりにソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」16GBモデルが獲得。2位にはauの「iPhone 4S」16GBモデルが続き、3位には6月28日発売のNTTドコモのAndroid搭載スマートフォン「GALAXY S III SC-06D」が入った。一方、3月から3か月連続で1位を獲得していた「Xperia acro HD SO-03D」は5位にダウンした。

「iPhone 4S」をキャリアごとに合算し、ドコモの「Xperia acro HD SO-03D」とauの「Xperia acro HD IS12S」を同一機種とみなすと、「iPhone 4S」ソフトバンクモバイル版(12.4%)がトップで、以下、「iPhone 4S」au版(8.5%)、「Xperia acro HD」(6.6%)、「GALAXY S III SC-06D」(4.4%)、「HTC J ISW13HT」(4.3%)の順だった。ワンセグやおサイフケータイなど、いわゆる「ガラスマ」仕様の「HTC J ISW13HT」の健闘ぶりが光る。週次集計では、5月第3週(2012年5月21日~5月27日)から6週連続でトップ10入りを果たし、6月はauのAndroid搭載スマートフォンではダントツの売れ行きだった。HTC製スマートフォン過去最大のヒットモデルといっていいかもしれない。

ドコモの夏モデル第一弾「GALAXY S III SC-06D」は、これまでのGALAXYシリーズの主力モデル同様、好調なスタートを切った。それでも昨年同時期に発売した「GALAXY S II SC-02C」の発売初日(2011年6月23日)の販売台数と、「GALAXY S III SC-06D」の発売初日(2012年6月28日)の販売台数を比較すると、およそ半分にとどまり、以前ほどの勢いはない。このほか、6月末発売のドコモ・auの夏モデルの順位は、「AQUOS PHONE ZETA SH-09D」が21位、11月17日公開予定の映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』とコラボレーションした限定3万台の特別仕様モデル「SH-06D NERV」が26位(すでに生産終了)、「AQUOS PHONE SERIE ISW16SH」が28位、「Optimus it L-05D」が57位となっている。

携帯電話は、以前から発売直後に一気に大量に売れ、その後は人気に応じて急落、または緩やかに低下する傾向にあるが、口コミでの高評価や端末価格・実質負担額の値下げによって盛り返す場合もある。多くの国内メーカーがスマートフォンに参入し、ラインアップが増えたこともあり、じっくりと比較・検討する一般ユーザーが増え、発売初日や発売直後にいち早く入手しようとする傾向はやや弱まっているようだ。

●auは「HTC J」が健闘、シェア14.0%で2位につける

続いて、主要3キャリア、ドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、キャリア別のランキングでは、iPhone 4S/4の各機種を合算し、1機種としてカウントしている。

ドコモのトップ10は、「GALAXY S III SC-06D」が0.6ポイントの僅差で「Xperia acro HD SO-03D」を追い抜いて1位を獲得した以外は、前月とあまり変わらなかった。

auは、「iPhone 4S」がシェア27.6%で1位を獲得。依然として他の機種を大きく引き離し、3割近い高いシェアを保っている。加えて、シェア14.0%で2位につけた「HTC J ISW13HT」などのAndroid搭載スマートフォンも好調で、スマートフォンに限った6月のキャリア別販売台数シェアは31.6%と、2011年10月以来、久しぶりに3割を超え、シェア45.1%のNTTドコモに続いて2番手に浮上した。

ソフトバンクモバイルは、1位の「iPhone 4S」がシェア55.9%を占め、防犯ブザー付端末「みまもりケータイ2」がシェア11.2%で2位に入った。

7月以降しばらくは、5~6月に発売済みの夏モデルと、ドコモの「Xperia GX SO-04D」や「ELUGA V P-06D」、auの「ARROWS Z ISW13F」など、7月中に発売予定の夏モデルが入り交じり、週ごとに順位がめまぐるしく変わる大混戦になることが予想される。6月第4週(2012年6月25日~7月1日)の機種別の週間ランキングでは、2位以下と圧倒的な差をつけ、「GALAXY S III SC-06D」がシェア17.7%で1位を獲得しているが、次週以降はわからない。スマートフォンの購入を検討中の方にとって、今のところ日本で最も売れたスマートフォンといえる「iPhone 4S」を含め、選び甲斐のある夏になりそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

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