iPhoneを基準として、断然安いため「格安スマホ」といわれたSIMフリースマホだが、4万5000円以上のハイエンドモデルの比率が高まっている

128GBモデルの場合で約9万円というiPhoneの一括払い時の価格を基準とすると、半額から3分の1以下と圧倒的に安いため、「格安スマホ」ともいわれるSIMフリースマートフォン。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、多く売れている価格帯は、「税別1万5000円以上2万5000円未満」と「税別2万5000円以上3万5000円未満」だ。月によって上下するものの、まさに格安といえる、「1万5000円未満」も1~3割程度を占める。

全体的に安いため、SIMフリースマホは、3万円台後半でも「高い」とみなされていた。「4万円以上」はハイエンドモデルの位置づけだ。もう少し高い「4万5000円以上」となると、該当する製品はごくわずかしかない。しかし、2016年10月以降、「4万円以上」の構成比が高まり、1割超を占めるようになった。SIMフリースマホ自体の販売台数が伸び、その中での比率が拡大しているにも関わらず、競合が少ないこの価格帯に目をつけたメーカーがある。

実は競争の少ない4万5000円以上のハイエンド

アクセサリメーカーのトリニティは、スマホ参入第2弾として「NuAns NEO [Reloaded]」を発表した。発売は5月の予定。スマホ本体(CORE)と別売の専用カバーが分離した独特の構造を採用し、税込価格は本体(コア)のみで4万9800円、別売のカバーを含めると5万円を超える、SIMフリースマホとしては少々高めの価格設定だ。

15年1月に発売した初代「NuAns NEO」はOSにWindows 10 Mobileを採用していたため、一般的なAndroidスマホを欲しいユーザーの検討候補からはずれていた。OSにAndroidを搭載し、約5.2インチのフルHD液晶ディスプレイなど、スペックを初代モデルから大幅に強化し、キャリアが販売するハイエンドモデル並みの”全部入り”となった「NuAns NEO [Reloaded]」こそ、実質的な参入第1弾といえるだろう。

製品発表会でプレゼンテーションした星川哲視代表取締役は、「安くするのではなく、長く使える端末を目指した。2017年の国内のSIMフリースマホの販売台数は300~350万台と推定される。その総数の5%を占める、4万5000円以上のハイエンドモデルは製品自体、あまりない。国内SIMフリースマホの3強、ファーウェイ、ASUS、FREETELの製品にはない、防水・防塵、おサイフケータイなどの機能を盛り込み、デザインコンセプトにも優れ、十分勝てると思っている」と話した。

VAIOも初AndroidでSIMフリースマホに参入 売れ筋の価格帯で挑む

「BCNランキング」によると、SIMフリースマホの参入メーカーは30以上にのぼり、国内メーカーでは、シャープ、富士通の携帯電話事業を分社化した富士通コネクテッドテクノロジーズ、京セラが参入済み。海外からはモトローラ、フランス発のAlcatel、Wiko(ウイコー)といった新顔も登場している。Wikoは、トリニティとは反対に、1万5000円未満の廉価帯を狙う。

また、VAIOは、Windows 10 Mobileを搭載した「VAIO Phone Biz」のスペックはそのままにAndroidに置き換えた「VAIO Phone A」を4月7日に発売する。初のAndroidのSIMフリースマホという点はトリニティと同じだが、「VAIO Phone A」は、LTE/3Gの同時待受が可能なデュアルSIMデュアルスタンバイ(DSDS)、ドコモのVoLTE対応で税込2万4800円と安く、注目が集まっている。

販売台数ランキングの上位に、熱心なスマホ好き以外にはあまり知られていない下位メーカーや新規参入メーカーの製品が入ってこそ、SIMフリーが一般化したといえるだろう。現状は、かつてはiPhoneが独占していた「売れている安い定番スマホが欲しい」というニーズの一部を取り込んだだけに過ぎない。

節約志向の高まりや、MVNOのリアル店舗での販売強化なども後押しとなり、今後、ますます、SIMフリースマホは伸びると予想されている。「伸び率」だけではなく、売れ筋の価格帯の変化にも注目したい。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。