呑みの席やたわいもない雑談で、定期的に交わされる定番の議論「東西におけるマクドナルドの略し方の違い」で盛り上がったことのある人も多いのでは? そう、関西が「マクド」で関東が「マック」というアレである。

つい先日も、ネットニュースなどで「あなたはマック派? マクド派?」的な記事を立て続けに目にしたが、当然この話に結論が出るはずもなく、たいてい最後は関西の「まいど」的なイントネーションから「マクド」が好まれている……といった無難な結論で締められているものが多い。確かに「まいど」に限らず、ケツの穴を「おいど」と呼ぶ関西弁が存在することからも、「〇〇ド」といったイントネーションを関西人が好むというロジックには頷ける。

現在30代後半以上の男子諸君なら覚えている人も多いだろうが、昔々、大阪の桜川のとある飲食ビルに、ノーパンハンバーガー店の「オイドナルド」なる店がありまして…(笑)。
しかもこの店のマークが「M」の逆の「W」で、おケツを彷彿させるマークであったところもこれまた秀逸。結局は本家マクドナルドに訴えられて名前を変えたものの、このネーミングを何の違和感もなく受け入れていた関西人は、やはり「マクド」と「オイド」の「〇〇ド」的な韻に何らかの親和性を感じていたのだろう。実際、この店に行く人たちが「オイド行こうぜ」と言っていたのかは気になるところだが……。

ただ、よくよく考えてみると「マクド」は単に「ナルド」を切り捨てた略語であって、「ミスタードーナッツ」の「ミスド」や「ファミリーマート」の「ファミマ」などの略語とは、ちょっと毛色が違う。

「ケンタッキーフライドチキン」も、関東では「ケンチキ」と呼ばれることも多いらしいが、関西では概ね「ケンタッキー」である。「モスバ」と呼ぶ人もいる「モスバーガー」も、実際、自分の周りにはそのように呼ぶ関西人はおらず、たいていが「モス」だ。

以上のことを考えると、「マック」や「ケンチキ」のような関東の造語的な洒落たセンスを持たない関西人は、切り捨て系の略語が多いことが分かる。最後まで言うのもイヤで、洒落た略語で呼ぶのも何だか……というこの気質は、まさに「せっかち」で「はっきり物を言う」関西人を象徴しているとは言えないだろうか。

その最たる例が、関西で知らない人はいないであろう、大手焼き鳥チェーンの「鳥貴族(とりきぞく)」だ。今では関東にも進出し、じわりと知名度を上げている同店だが、もうすでに東西の略称に違いが出始めているという。

関西での愛称はズバリ「トリキ」だ。これ以外にないだろう。「貴族」を真ん中でぶった切るこの切り捨て御免の潔さは、まさに関西ならではである。では、関東では何と呼ばれているのか? これが驚いたことに「トリッキー」と呼ぶ人が多いのだとか。てか、めっちゃ洒落てるやん!!

そこで「鳥貴族」の公式ホームページを覗いてみると、カワイイ鳥キャラが「トリキの最新情報をお届けするよ~」と発言している。なんと「トリキ」は、ホームページでも使われているオフィシャルな造語だったのだ。今回はあっさりと関西に軍配かと思いきや、この鳥キャラの名前が、なんと「トリッキー」なんだとか!? 

う~ん、なんともややこしくてトリッキーな話である。そこで、「鳥貴族」の大阪本部にどちらが正しいのかを問い合わせてみた。回答は以下の通り。

「うちは若いお客さんが多いことからも、トリキやトリッキーなど多くの愛称があると聞いております。ただ、どちらが正しいとかどちらを推奨しているとかはありません」

なるほど。マクドナルドが同様の質問を受けた際も、ほぼ同じようなコメントを出しておりました。ま、愛称は公式に縛るのではなく、お客さんの好き好きで呼んでもらえればということなのでしょう。となると、今後の定着度合いによって、どちらがイニシアチブを握るのか注目といったところ。現時点では関西に圧倒的店舗数を誇る「鳥貴族」だが、2005年の東京進出以来、埼玉、千葉、神奈川と着実に関東圏での店舗を増やしてきていることからも、今後「トリッキー」派が増えることも十分に考えられるのでは??
マクドorマック論争に続く、このトリキorトリッキー問題。
ま、安くて美味しければどちらでもいいのですが、「トリキ」に慣れ親しんだ関西人としては、今後の行く末に注目せざるを得ません。


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すずき・ひであき ぴあ株式会社関西版ぴあ編集部所属。「ケンドーコバヤシのたまらない店」などの“たまラン”シリーズをはじめ、幾多のグルメ誌を手がける、関西ぴあのグルメ侍。他にスポーツ、お笑い、サブカル系なども隙あらば担当。座右の銘は「あしたがすき」。身長186cm/体重92kg。LEVEL41。愛称はゴリ。