「東京国際ブックフェア」で注目を浴びた「kobo Touch」

電子書籍の時代は来たのか――。7月4~6日、東京ビッグサイトで開催された電子出版に関する展示会「第16回国際電子出版EXPO」「第19回東京国際ブックフェア」で気になった端末や参考出品されていた端末を紹介しよう。

電子書籍市場は、ここ1~2年で急激に脚光を浴びるようになった。特に、スマートフォンやタブレット端末向けの電子書籍配信サービスが急増している。夏以降には専用機の新端末が続々登場する予定など、市場の拡大が見込まれる。

電子書籍端末は、電子ペーパーを採用した「専用端末」と、カラーディスプレイを採用した「汎用端末」の2種類がある。専用端末は、極小のカプセルに封じ込めた白色と黒色の粒子を電気の力で動かして画像を表示する。

バックライトが不要で、表示内容を変更するときだけ電気を使うので消費電力が少なく、バッテリ駆動時間が長いのが特徴だ。液晶ディスプレイと違って画面が光らないので、屋外でも見やすく、目にやさしいといわれている。ただし、表示はモノクロ。小説などのテキストを長時間読むのに適している。

一方、汎用端末はカラー表示に対応し、写真や映像などを美しく表示する。ファッション誌など、カラー写真が多い雑誌などを閲覧するのに適している。

●東芝、ソニーから電子書籍端末が発売中

汎用端末では、今年2月、東芝が「BookPlace DB50」を発売した。8GBのフラッシュメモリを内蔵し、小説なら約6000冊、コミックなら約150巻を収納できる。主な仕様をチェックしよう。

特筆すべきは、音声読み上げ機能を搭載している点。対応するコンテンツをヘッドホンで聞くことができ、音声の性別も選択可能。ネット検索機能やSNS機能を備え、書評を調べたり、電子書籍の感想をSNSにアップしたりできる。実勢価格は2万2000円前後で、電子書籍ストア「BookPlaceストア」で使える5000円分のポイントついてくる。

豊富なラインアップを揃えているのが、ソニーの「Reader」だ。通信機能をもたず、PCを経由してコンテンツを追加する5型の「Reader Pocket Edition PRS-350」、6型の「PRS-650」のほか、Wi-Fi対応モデル「PRS-T1」と3G+Wi-Fiモデル「PRS-G1」をラインアップする。ここでは「PRS-G1」の仕様を記しておく。

2GBの内蔵メモリに一般的な書籍なら約1400冊、コミックなら約35冊の保存に対応。microSDメモリカードスロットを備え、書籍やコミック、PDFのオリジナルコンテンツを読み込むことができる。実勢価格は2万6000円前後だ。

●夏以降新モデルが続々と登場、注目度No.1は楽天の「kobo Touch」

「電子出版EXPO」「東京国際ブックフェア」で最も注目されていたのが、7月19日発売の楽天の「kobo Touch(コボ タッチ)」だ。カラーは、ブルー、シルバー、ライラック、ブラックの4色。

カナダ・トロントに本社を置く楽天の子会社、Koboが開発した端末で、すでにカナダや米国、英国、フランスなど8か国で販売している。マルチデバイスに対応し、「koboイーブックストア」で購入した電子書籍を対応アプリケーションを通じてスマートフォンやPCなどでも読むことができる。価格は驚きの7980円だ。

「kobo Touch」の対抗馬として注目されるのが、凸版印刷が参考出品していた電子書籍ストア「BookLive!」の電子書籍端末だ。今秋発売の予定で、名称は未定。「BookLive」のサービスをそのまま利用できる。

展示されていたのは試作機で、実際の操作はできなかった。端末の仕様や価格、サービス、販売方法などについては、今後発表する。価格は7000円前後の予定だ。

年内には、米Amazonが製造・販売する電子書籍リーダー「Kindle」も発売される。すでにAmazon.co.jp上で「近日発売」と告知。「Kindle」本体と電子書籍サービス「Kindle」という黒船の上陸によって、日本の出版界は否応なく変わるだろう。

2011年は「電子書籍元年」といわれ、昨年から今年にかけて、多くの電子書籍サービス・電子書籍を中心としたコンテンツ配信ストアが誕生した。しかし、あまりにも急激な立ち上がりで、利用者には違いがわかりにくく、まだ「市場」を形成しているとは言い難い。専用端末の売れ行きも低調だ。

従来の紙の書籍に代わって、さまざまなデバイスで閲覧できるマルチデバイス対応の電子書籍サービスが広く普及するのか。電子書籍の閲覧に特化した専用端末と、スマートフォン・タブレットなどの汎用端末のどちらが主流になるのか――。二つの視点から、電子書籍市場の動向に注目していきたい。(BCN・山下彰子)