目を見ないこと、そらすことは、海外では『あなたとのコミュニケーションに興味がありません』『迷惑です』という態度であり、大変失礼な行為にあたります。

日本人もそれを頭では理解している人も多いはず。ただ、日本人の場合、目を合わそうと意識していても、自分で思っているよりもずっと、相手の目を見ていない時間が長いものなのです。これは無意識の領域ですから、子どもの頃から根付いているクセと言わざるを得ません。

海外では、お店に無言で入ってきて店員の挨拶に反応もせず、誰とも目を合わせずに商品を見ている客は、泥棒ではないかと警戒の目で見られるそうです。

子どもの頃から、店員さんにあいさつをされたら目を見てあいさつをし返すよう、習慣づけられるといいですね」

5.ノーを言うとき、返答をあいまいにする

森「日本人は、断るときに、返答をあいまいにしながら笑顔を見せることがよくあります。あえて表現や態度をあいまいにしたり、多くを語らなかったり、暗黙の了解があったりというのは、日本独特の、いわば『察する文化』。

日本では気遣いの一種ですが、海外では『発言』と『態度・表情』が一致していないと、逆に違和感や不信感を持たれる原因になり、誤解を生むことが少なくありません。グローバル社会では、相手に正しく伝わるように明確に自分を表現する姿勢が必要です」

マナーは「相手を尊重する気持ち」を伝えるもの

なお、子どもに教えるときには、マナーがなぜ大切なのかも説明できるといいかもしれません。森さんは、グローバルマナーの必要性について、次のように語ります。

森「マナーは、単に礼儀作法というだけでなく、コミュニケーションスキルの土台の部分です。昔から国同士の外交の現場では、相手に敬意を表すため、円滑に話を進めるため、そして保安のためのルールとして、マナーが存在していました。いわゆる国際儀礼、プロトコールですね。

個人の異文化コミュニケーションの場でも、相手の信頼を得るためには、プロトコールのようなルールや共通認識を用いる必要があるのです。

マナーのベースにあるのは、相手への尊重と思いやりです。『異文化の存在を理解し、受け止めて、敬意が相手にきちんと伝わるように、行動で示すこと』。それがグローバルマナーだと私は考えています」

今回ご紹介した5つのポイントは、グローバルマナーの初歩の初歩。

代田「どこまで実践するかは、年齢や周囲の環境にもよると思いますが、これからのグローバル社会を生きていく子どもたちには、ぜひ世界で通じるマナーとコミュニケーションスキルを育んでいってほしいです」

最近は、海外に行かなくても、職場のほか、幼稚園や保育園などでも、海外出身の人と出会う機会が増えています。ママ自身も、子どもといっしょにグローバルマナーを学んでいけるといいですね。

取材協力:代田眞知子

マナー講師。株式会社トリプルウィン取締役、グローバルキッズマナー/スチューデントマナー講座を担当。

日本航空株式会社30年勤務。ママさんCAのパイオニアとして乗務時間23000時間達成。国際線シニアスーパーバイザー。主に国際線ファーストクラス担当、人材育成にも携わる。早期退職後、青山セラピストスクールの副学長を経てマナースクール講師に。

取材協力:森 裕美

マナー講師。株式会社トリプルウィン代表取締役。日本航空株式会社にて30年以上にわたり、国際線客室責任者、客室マネジャー(管理職)として勤務。早期退職後、企業向け接遇・コミュニケーション研修、リーダーシップ研修、アンガーマネジメント研修、業績アップに繋がるマナー研修の他、グローバルマナースクール(東京八重洲、駒沢大学、横浜)を主宰。

京都在住ライター。私大文学部を卒業し、会社勤めを経てフリーライターに。東京都内で活動した後に、京都市左京区に引っ越し出産。その後は京都で子育てをしながらライター業を続ける。インタビュー・取材記事をはじめ、カルチャー、ヘルスケア、生活などのジャンルで幅広く執筆。