左からM高史さん、母の美加さん、三男の鴻輝さん、次男の鮮輝さん

昨年の福岡国際マラソンで故障を抱えたまま、2時間9分11秒で日本人トップの総合3位となり、見事、今年のロンドン世界陸上の切符を手にした川内優輝選手。

本人の口からは聞けない言葉を、川内優輝選手のモノマネをしているM高史(以下M)さんを通じて、優輝選手の家族の母の美加さん、弟の鮮輝(よしき)さんと鴻輝(こうき)さんから引き出しました。

家族のみなさんは優輝選手のことをどう思い、どう支えているのか。家族の前でしか見せない川内優輝選手の姿とは?

以下、インタビュー
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―福岡国際マラソンに強行出場するまでの経緯

M:福岡国際マラソンでは家族の反対を押し切っての強行出場という話を聞きました。
2時間9分11秒という素晴らしい結果でしたが、レース直前までどんなことを思っていましたか。

鴻輝:
ロンドン世界陸上を目指すにあたって手段はいくつかありました。福岡国際マラソンにこだわらなくても、2か月後の東京マラソンや3か月後のびわ湖毎日マラソンという選択肢もありました。

わざわざ、コンディションが整っていない福岡国際マラソンに出場することに対し家族全員大反対です。

M:どんなときにそういう会話に。

鴻輝:
どういうときというか、こっちからふっかけます。「やめとけ」って。

M:そういうとき優輝選手はどんな反応を?

鮮輝:
何の反論もせず黙っています。ただ、こちらから言い過ぎると怒り出すというか、「じゃあ、出場しないことを新聞社とかテレビ局にお前が連絡してくれるのか!」ってなりますから、あまり言い過ぎないようにしています。

母:
最初は万全じゃないのにスタートラインに立つことに再三反対したのですが、ずっと黙っているので、これはもう本人の中で意思が固いなと。

どんな状況だろうと出場するという決意を持っていることを悟ったので、これはもういくら反対しても聞かないから本人の意思に任せるしかないかな、と思いましたね。

出場する意思が自分の中では決まっていたのに、家族に反対されたのは嫌だったのだろうなって思います。だから、何を言われても黙っていたのかなと。

―逆境への強さの理由

M:学生時代の箱根駅伝(第83回、第85回の箱根駅伝を学連選抜として、いずれも6区で出場)前も寝込んでいたっていう話を聞きましたが、レース前のアクシデントはよくあるのですか?

鴻輝:
箱根駅伝前に限らず、レース前に体調を崩すということは多いですね。箱根駅伝のときは風邪をひいていましたが、そのときは区間3位。逆に、全ての調子がよかったときは、あまり良い走りをしてないですね。

逆境に強いというか、不安があるときの方がいいパフォーマンスができています。先日の2時間10分を切った愛媛マラソン(2017年2月12日開催。川内選手は2時間9分54秒の大会新で優勝)前も、とても2時間10分を切れるようなトレーニング内容ではなかった。

僕でも一緒にできてしまうくらいのトレーニング内容でしたからね。手を抜いているわけではないし、疲れている感じもありましたね。

M:それってどういうことなのでしょう。

鴻輝:
自分自身に期待が持てるときよりも、自分自身に言い訳があるときの方が良い結果を出せる傾向はあります。

鮮輝:
開き直る能力が高いと感じます。福岡国際マラソン前も故障で思うようなトレーニングができてないという悪い流れの中、さらにレース3日前に捻挫をしました。

兄もかなりテンションが下がっていて、大会前日には事務局にドーピングにひっかからない痛み止めがあるかという問い合わせをしたくらい切羽詰まっていました。

さらに大会前日に福岡でいきつけのカレー屋にいったら、そのお店がつぶれていた…。兄には直接言えなかったけど、これって完全に最悪の流れだなって。

ただ、翌日(レース当日)の朝、兄を見たら何か違っていました。明らかに前日とは雰囲気が違う。何かを悟ったように前日とは別人に。そして、あの快走です。

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