["\n 家電カテゴリを横断したAIoT(モノの人工知能化)化を推進する「COCORO+(ココロプラス)」プロジェクト。もともとシャープはIoTに対して積極的だったが、一般消費者に広く普及する決定打を生み出すまでには至っていなかった。仕切り直しともいえる今回のプロジェクトからは、単に「IoT機能を搭載する」だけでなく「いかにユーザーにIoT機能を使ってもらうか」を重視する姿勢がうかがえる。

シャープの造語という「AIoT」というワードに込められた思いとともに、「COCORO+」の第6弾となる「プラズマクラスター冷蔵庫 SJ-TF49C」の戦略を、IoT通信事業本部 IoTクラウド事業推進センター プロダクトマーケティング部の松岡晶子主任に聞いた。

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「AIoT」が変えるのは「人と家電の関係性」

\n シャープの「人と家電の関係性」を変えたいという狙いは、3~4年前から展開する「ともだち家電」シリーズからの変わらぬ戦略だ。

\n 「冷蔵庫に関していえば、単機能から多機能に推移してきたが、ユーザーが多すぎる機能を使いきれないという課題があった。われわれが目指しているのは、単なる“道具”であることを脱却して“パートナー”にすること。ユーザーの悩みに対して、能動的に気づきを与えることで、より快適な暮らしを実現するサポートをしたい」と松岡主任は語る。

\n 「AIoT」は文字通り「AI」と「IoT」を組み合わせた造語だ。IoTで収集したデータを、AIがユーザーごとに嗜好や生活リズムを学習し、最適なタイミングで伝える。これにより人間が一方的に使用するのではなく、冷蔵庫からも働きかける双方向性が実現する。

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IoT冷蔵庫の土台となる「Good Timing Message」

\n 「COCORO+」の商品群は根本は同じAIだが、カテゴリによってそれぞれの家電の性質に沿ったカスタマイズが施されている。3月21日に発売した「プラズマクラスター冷蔵庫 SJ-TF49C」が重視したのは“タイミング”だ。

\n 「接触機会が多く、その時間帯も規則的な冷蔵庫は、使用履歴からユーザーの生活リズムを知ることができる。『SJ-TF49C』は『Good Timing Message』という機能が土台にあり、出社時は夕飯の献立提案、就寝前は次の日の天気といった具合で、適切なタイミングで情報を発信することができる」(松岡主任)

\n 「Good Timing Message」は、およそ2週間でユーザーの家庭の生活リズムを学習するという。誤差があったとしても、その後の使用状況から改善を重ねる。あるタイミングを境に生活スタイルがガラリと変わったとしても、2週間経てば新しいリズムに適応するので、ユーザーが気を遣う必要はない。

\n ターゲットとして狙うのは、共働き家庭のワーキングママだ。「仕事と家事をこなすワーキングママにとって、夕飯の献立を考えたり、食材のストックを把握するのは負担です。『SJ-TF49C』の機能を活用すれば、これらの作業にかかる労力を大幅に軽減することができる」と松岡主任は具体例を挙げる。

\n スマートフォンアプリ「COCORO KITCHEN」と連携すれば、外出先から冷蔵庫に登録した買い物リストを確認したり、冷蔵庫が提案した献立のレシピを確認したりすることも可能だ。最先端機能といえど、ユーザビリティはシンプルで、操作の複雑さから敬遠されないように配慮している。

\n 「最先端の機能も使ってもらわなければ意味がない」と松岡主任が語るように、“持ち腐れしない”ということがIoT機能を浸透させるためには欠かせない。今後は他社製を含めた冷蔵庫以外の家電やクラウド経由で利用できるサービスの幅を広げることで、利便性を拡充する予定。一気にシェアを広げることは難しいにせよ、シャープのIoTの進化が正しい方向でじわじわとユーザーに歩み寄ってきているのは間違いなさそうだ。(BCN・大蔵 大輔)