佐原: 私が最初に映画の世界に憧れたのは、岩井俊二監督作品でした。

どのタイトルがっていうよりも、あの世界観が当時流行ってたんです。服装もそうだし、出てる女の子たちもすごく可愛いし。

薄:僕も『リリィシュシュのすべて』を観たのが渋谷のシネマライズのデビューだったんです。

上の世代の人だとシネマライズのイメージって『トレスポ』だったりすると思うんですけど、僕らの世代は『リリィシュシュ』だったり『青い春』だったり、カッコいい日本映画がかかってる劇場っていう憧れがありました。

後藤: 私の世代と全然違う! シネマライズは洋画の映画館だったのに!

佐原: 私たちは邦画の方が強い時代に育ったんで。オダギリジョーさんとかが出て来たり、邦画がキラキラしてましたよね。

後藤: 私たちは邦画が一番ダサいとされた時代に青春時代を送ったのね(笑)。

洋画のスターは、金曜ロードショーで刷り込まれた

大林: 僕らは世代的に、邦画ってドラマの映画版のイメージですね。まさに『木更津キャッツアイ』とか『踊る大捜査線』とか。

佐原: 逆に洋画のスターってテレビの金曜ロードショーとかで刷り込まれてるんですよ。『ターミネーター』『ミッション:インポッシブル』『エイリアン』『ランボー』『ロッキー』とか何回もやってましたし。

大林: 僕はテレビで散々『メン・イン・ブラック』を観ていて、小学生の時にオトンと一緒に『MIB2』を劇場に観に行きました。

それで映画館で観る体験にすごくハマりました。パンフレットもまだ家にあります。「スター・ウォーズ」のエピソード2もオトンと行ったんですけど、そっちはチューとかしてるんで気まずかった記憶ばっかり残ってます(笑)。

薄: シネマライズは「ああ、ミニシアターってこういうことか!」と衝撃でした。それまではデパートと一緒にあるようなシネコンしか知らなかったんで。

佐原: 今は亡きライズ……。私もハリウッド大作系よりミニシアター系を選んで観に行ってました。

ライズでリアルタイムで『トレスポ』を観た人が羨ましい。『T2 トレインスポッティング』観ても「今度はこのシーンがキター!」みたいなのあるのかしら。

『T2 トレインスポッティング』公開中

――やっぱりイギー・ポップの曲がかかって走るところとかでしょうね。

佐原: ああ、やっぱ走るんだ! 『ターミネーター』でも「アイルビーバック」って言ってもらえると「キター!」って思いますよね。

『ミッション:インポッシブル』ならあのテーマ曲だし、「スター・ウォーズ」なら「フォースとともにあらんことを」みたいなセリフとか。

――『トレスポ』の4人では誰が贔屓とかお目立てありますか?

佐原: 私は金髪のシックボーイです。あのロクデナシ具合がすごいカッコいいなと思ってました。

薄: シックボーイ役のジョニーリーミラーってアンジェリーナ・ジョリーの昔の旦那さんですけど、最近は海外ドラマとか舞台がメインで、映画では久しぶりな感じがしますね。

佐原: 確かにユアン以外、あんまり『トレスポ』以外の代表作って思い浮かばない。あ、ロバート・カーライルには『フル・モンティ』があるか。

大林: 僕は007がダニエル・クレイグになったことが、すごいツボだったんです。

007シリーズってジェームズ・ボンドの役をいろんな人がやってるわけですけど、自分たちの時代の007っていう感じがすごかった。それまでのシリーズってもっと、家でこっそり見るようなものっていう印象だったんです。

佐原: わかる! ちょっとアダルティな感じでしたよね。

大林: タイプでいくと、それまでのボンドは燃え上がるような大人っていうイメージだったんですけど、ダニエル・クレイグは氷のようにクールなカッコよさ。

薄: なんかスナイパー感があるよね。

大林: あります、ありますね。

薄: 007って女たらし要素が先行しちゃってる感じがある中で、ダニエル・クレイグはちょっと違った。

佐原: 逆に私はダニエル・クレイグがどう女の人を口説いてくれるんだろうってすごく期待してたのに、意外なほど硬派だったから「なんだよ!」って思ったんだよね。

ボンドにはもっと女たらしでいて欲しい。口説いてる合間にスパイ活動みたいなのが007じゃないですか? でもわりとストイックに調査活動してんなーって。

薄: 007は代替わりするけど「インディ・ジョーンズ」なんかは昔は昔、今は今の良さがあるよね。

最初に観た時だとハリソン・フォードはまだちょっと若くて、でもオッサンの考古学者を演じていた。

今は実年齢にマッチして、スローな動きとかも似合ってきた感じがする。

『クリード』だと、ロッキーがもう引退していて、トレーナーとして後進を育てるっていう新しい姿が見られて面白かったです。主人公のクリードもロッキーの魂を受け継いでいく感じがよかった。

佐原: 確かに。『クリード』は違った目線の新しい作品としても観られるし、『ロッキー』の続編という観方もできますよね。

私がずっと同じ役を同じ人がやっていて、昔からカッコいいなと思ってるのは『ミッション:インポッシブル』のトムクルーズ。やっぱり期待にちゃんと応えてくれる感じがするじゃないですか。

薄: 応えるどころか、常に上回ってくるよね。

佐原: もはや超人ですよ。毎回「こんな画が撮れたんだ!」みたいな驚きをちゃんと提供してくれるのも凄い。

薄: トム・クルーズやスタローンって、歳を取って渋味が増すみたいなところを超えてきますよね。

逆に『トレスポ』はダメさも含めて変わらないのが愛らしいというか。「うわ、変わってねー」って。