ロードムービーなライトノベルの代表作をアニメ化! 『キノの旅 -the Beautiful World-』

「ロードムービー」な作品と聞くと、即座にこの『キノの旅 -the Beautiful World-』を思い起こす方も多いことかと思います。

時雨沢恵一先生によるライトノベルからスタートした本作は、様々なメディアミックス企画を展開しながら、20年近く歴史が続いている人気シリーズです。アニメ版は、2003年に衛星放送チャンネル「WOWOW」のノンスクランブル枠(この響きに懐かしさを覚えるアラサー、アラフォーのアニメファンも多いのでは?)にて、全13話が放映されました。

主人公の少女、キノと彼女の相棒的な存在であり、移動ツールでもある人語を話すバイク(作中では「モトラド」と呼ばれています)のエルメスが、様々な国を巡り、行く先々でエピソードが紡がれるオムニバス形式の物語です。

キノとエルメスが辿り着く異国では、独自の文化や風習を持つ人々が暮らしているのですが、各国民の生活を通じて描かれる物語には、しばしば人間の根幹について考えさせられるようなメッセージが含まれており、寓話性の高いストーリーが本作の特色となっています。

ファンタジックでありながら、どこか厭人的で悲哀に満ちたエピソードも多く、観た後に色々と感性を刺激される作品でもあります。

また、メインキャラクターであるキノとエルメス役にアニメ専門の声優ではない俳優を配したキャスティングや、劇中で頻出するテキストを画面上にレイアウトする演出技法なども、本作ならではの不可思議な質感を強調しています。

先日、悠木碧さんをキノ役に迎えての新作テレビアニメを制作するというニュースも発表された本シリーズ。このWOWOW版は、アニメ版の原点として、今こそ観返したい作品です。

全国行脚で悪人退治、時代劇な和風ロードムービーアニメ! 『風まかせ月影蘭』

最後に"隠れた名作"として紹介したい一本が、大地丙太郎監督の『風まかせ月影蘭』です。

時は、天下泰平の江戸時代。凄腕の剣の達人でありながら気ままに流浪を続ける女剣士の月影蘭と、人一倍情に厚い心根の持ち主であるものの、おっちょこちょいな性格の為に、度々、蘭をトラブルに巻き込む女流拳法家のミャオという凸凹コンビを主役に据えた作品であり、この二人が全国を旅しながら各地で弱きを助け、悪を斬る……という時代劇の王道を征く作風が取られています。

勧善懲悪を徹底した時代劇のフォーマットを踏襲するストーリー展開は、単純明快かつ爽快感に溢れており、気負わずに各エピソードに対峙することができる何とも楽しい仕上がりに。

『水戸黄門』や『三匹が斬る!』を思わせる「時代劇でありロードムービー」な物語は、まさに日本ならではです。主題歌には、何と演歌を使用するなど、「和」の世界観を意識したこだわりは、作劇や演出にも現れており、雰囲気もタップリ。

普段はクールで飄々としているものの、大好物のお酒が絡むと目の色を変える蘭や、蘭とは反対に表情をクルクル変えながら毎度毎度の大騒ぎを引き起こすミャオのキャラクターも良く、この二人が、生き生きと躍動する姿は、本作の大きなチャームポイントです。

また、ギャグやコミカルなシーンもふんだんに盛り込まれている一方で、ケレン味タップリな剣劇やアクションシーンも大きな見どころとなっています。

人情味たっぷりのドラマに、軽妙洒脱なコメディとカッコ良いアクション。主演の安原麗子さんと岡村明美さんという女性声優のお二方に加えて、吉松孝博さんや"演出アドバイザー"という肩書で本作に参加している桜井弘明さんなど、大地作品にはお馴染みのクリエイター陣による仕事も素晴らしく、痛快なエンターテインメント作に仕上がっています。

個人的にも大地監督のフィルモグラフィーの中でも、特にお気に入りの作品。和風ロードムービーアニメの良作として大推薦な一本です!

都内在住の極々平凡なサラリーマン兼、アニメ、音楽、プロレス、映画…と好きなものをフリーダムに、かつ必要以上に熱っぽく語るBLOG「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」管理人。永遠の"俺の嫁"である「にゃんこい!」の住吉加奈子さんと共に、今日も楽しいこと、熱くなれることを求めて西へ東へ。