■ホラー映画はこんなことろが面白い【講義編】

そこで、ここからはいよいよホラー映画の楽しみ方、講義編。ホラー映画のどんなところが面白いの? って質問を有村さんにストレートにぶつけてみることに。すると、次のような答えが返ってきた。

「映画はタイム・イズ・マネーのエンターテインメントだから、だいたい始まって7分ぐらい経ったところで1アクションあるんです。ホラー映画にもそういう法則があって、監督はどうやって怖がらせてやろう? って思うし、観客はこう来るんじゃないか? って予測して構えたり、そっか、こう来たか~ってビックリしたりする。そういう目に見えない戦いがあって、監督の恐怖演出が1ミリでもこちらの期待や想像を超えていたりすると、ヤラれた! って思うし、それがスゴい! っていう快感に変わるんです。でも、血があまりにも多く出過ぎたり、やり過ぎちゃうとコメディになって怖くなくなってしまう。そういう意味では清水崇監督の『呪怨』なんかは、あと1ミリ超えたらコメディになっちゃう、臨界点ギリギリのところで勝負しているから、めちゃくちゃ怖いんです」

う~む……その面白さは分かるけれど、でも、やっぱりこれは玄人か、心臓に毛の生えた人の楽しみ方だよね。これを読んだら、興味を持つどころか、余計観てくれなくなっちゃったりして。そう思っていると、筆者の心を代弁するように滝沢さんが、私には無理って顔をしている。そうなんです、有村さん、普通の女性でも観られるホラー映画はないんですか?

「『呪怨』とはまた違う恐怖のアプローチで、僕も好きなんですけど、『アザーズ』('01)は怖い映画が苦手な人でもヤラれると思いますよ。要は『シックス・センス』('99)と同じような恐怖のアプローチで、怖い、怖い、怖い、ってずーっと淡々と描いてきて、最後にドーンと大ドンデン返しがある。しかも、『スティーヴン・キング 骨の袋』と同じでちょっとホロリ感があるんですよね」

するとそれを聞いて、滝沢さんも「あっ、そういうのなら私も観られます。面白そうですね」と笑顔を見せる。そうなのだ。ホラー映画と言っても、スプラッタからオカルトまでいろいろあって、知らない人は嘘だと思うかもしれないけれど、中には“泣ける”名作だってある。『シックス・センス』『アザーズ』はもちろん、そのほかにも『チェンジリング』('80年のカナダ映画。クリント・イーストウッド監督作とは別作品)、『ザ・フライ』('86)、スティーヴン・キング原作の『ペット・セメタリー』('89)といった作品は涙なくして観られない。騙されたと思って、まずはこのあたりから観てみるのもいいかもしれない。