「あの頃」の雑誌たち

「ヴィジュアル系」というジャンルが誕生しブームを巻き起こした90年代に比べて、あまり振り返られることが少ない「ゼロ年代」のヴィジュアル系。

世間的にはブームが去り一時は「冬の時代」と呼ばれてはいたものの(それでもCD売上は今よりずっと高いんですけどね)、インディーズシーンではNIGHTMAREや大日本異端芸者ガゼット(現・the GazettE)、メリー、シドetc……といった90年代のバンドたちに影響を受けた新世代のバンドたちが台頭していきました。

その楽曲もメタル系から歌謡曲風のもの、テクノポップまで幅広く、バラエティに富んだサウンドでファンを楽しませてくれました。

「密室系(レーベル「密室ノイローゼ」出身、あるいはそのバンドに影響を受けたバンド)」や「オサレ系(従来のヴィジュアル系とは違い、ポップな原宿系ファッションに身を包み、ミクスチャーロック寄りのサウンドのバンド。「おしゃれ」ではなくネットスラングの「オサレ」なのは当時のネットコミュニティによって名付けられたため)」、「白塗り系」、といったサブジャンルも発生し、細分化していきました。

また、インターネットの発達により海外ファンの声も日本に届くようになり、メジャーのみならずインディーズバンドでも海外公演を行うことが増えたのもゼロ年代以降からだと記憶しています。

ゼロ年代中盤になると「ネオ・ヴィジュアル系」と呼ばれ、海外評価も相まってメディアから再び注目を浴びることも増えました。

07年頃からD'ERLANGER、X JAPANやLUNA SEA、などの大物バンドがつぎつぎと復活を遂げました。そしてゼロ年代末にはエアーバンド、ゴールデンボンバーの大ブレイクもシーンに衝撃を与えました。

このように大まかなトピックをあげただけでも色々なことがあり、ひとくくりにできない時代だということがわかります。

参考までにちょっと個人的に好きな作品の一部を挙げますと、MUCCの『痛絶』が01年、deadman『no alternative』が03年、シド『憐哀』が04年、彩冷える『鉄の島』が05年、アリス九號.(現A9)『絶景色』が06年、lynch.の『THE BURIED』が07年、DELUHI『Yggdalive』、ViViD『Take-off』、ゴールデンボンバーの『女々しくて(最初のリリース盤)』が09年……、うわ~書いててクラクラしてきました。

ファッションも、世界的に広まった「ゴシックロリータ」「デコラ」からV系+ホストファッションの「Vホス系」まで、さまざまな系統がありました。

そんな楽しくカオスだったあの時代を、当時を駆け抜けたバンギャルさんと共に振り返ってみました!

座談会参加者

(左から)チノフさん・みるくさん・キリさん。「ゼロ年代をイメージしたお洋服」で参加していただきました。なお中央は「白塗り系」を意識したファッションの筆者です。

・みるく
小学生でBUCK-TICKにハマり、中学で出会ったPenicillinを追いかけ回す日々の中でインディーズバンドに出会う。目下インディーズ発掘に走るようになってからは毎週のようにどこかしらのライブハウスに出没。
当時の好きなバンドはRenterer en Soi、Ruvie、ファンタスマゴリア、ヴィドールなど。「お腹いっぱい」と言いながらバンギャルから抜け出せずにいる。

・キリ
中学生でPierrotをきっかけにバンギャルに。TV番組「SPARK!」でインディーズバンドと出会いどっぷりハマっていく。
当時好きだったバンドはLa’cryma Christi、deadman、Sugar Tripなど。近年追いかけていたバンドが軒並み解散したため野良バンギャル状態。

・チノフ
12才の時ラルクをきっかけにバンギャルに。その後田舎で細々とJannerをやっていたが、大学入学のために上京したのを機に、インディーズバンドにのめり込む。
好きなバンドはメガマソ、Dolly、少女-ロリヰタ-23区など。社会人で最近はなかなかライブに行けないが、現場にいけずとも心はバンギャルがモットー。