コミックスはB4サイズのアニメージュコミックスワイド判として徳間書店から全7巻で発売されています。もちろんバラでも購入可能ですが、7巻セットのボックス入りも発売されていますので、まとめて購入するのなら、こちらがお勧めでしょう。完結から18年経っても購入可能なのは、宮崎人気もさることながら、『風の谷のナウシカ』そのものの魅力が大きいからだと思います。

ただし劇場アニメを見た人が漫画を読むと、大きく違和感を覚えるかもしれません。漫画連載の途中でアニメ化されたため、途中から劇場アニメとストーリーが大きく異なり、結末も全く違ったものになっています。劇場アニメは概ねハッピーエンドと言っても良いでしょう。いずれにも大きな被害があったものの、なんとか落ち着く方向へと進み、明るい未来を感じさせました。

漫画版の内容を詳しく書くのは避けますが、一応の決着はつけたものの、まだまだ混沌とした状況は続きそうに思わされました。また主人公のナウシカの行く末も明確にはなっていません。多くの面において、いろいろ含みを持たせた終わり方になっています。

「巨神兵像」竹谷隆之作 (C)2012 二馬力・G
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さて人間以外にも魅力的なキャラクターが登場するのが、宮崎作品の面白さだと思います。『風の谷のナウシカ』では、巨大生物の王蟲と巨大な人工生命体の巨神兵が双璧でしょう。成虫の王蟲は圧倒的な破壊力で人間や人工物をも駆逐する恐るべき存在ですが、その殻などはいろいろな用途に利用できるため、素材として欠かせないものになっています。またある程度意思の疎通も可能であることから、漫画でも劇場アニメでも主要な役割を果たしました。もう一方の巨神兵は、漫画と劇場アニメで大きく扱われ方が異なりました。

劇場アニメでは、地上を壊滅させた原因として、また復活させた巨神兵も王蟲を駆逐する兵器として使われたのみに終わっています。

ちょっと余談ですが、襲いくる王蟲に対して、トルメキアの皇女であるクシャナの「なぎはらえ!」は、言ってみたいセリフ第10位くらいには入ると思うのですが、いかがでしょうか。

漫画の巨神兵はナウシカと意思を通じ、あろうことかナウシカがお母さんにまでなってしまいます。普通なら未婚の母でこんな子供を抱えて途方にくれても仕方ないはずなのですが、そこはナウシカ、さすが主人公。巨神兵をリードしつつリードされつつ、騒乱を収めるために動いていきます。